牛白血病ウイルス(BLV)感染牛の初乳抗体を活用した新生子牛のBLV感染防御法の確立を目指し、初乳抗体のウイルス感染抑制能のin vitroでの検証を試みた。乳汁抗体価の測定系として、シンシチウム形成阻害試験(SIIA)の使用を検討したところ、乳清を検体とすることで乳汁抗体価が測定可能となった。測定系の確立により、in vivo でのBLV感染防御に必要な抗体量の検証が可能となっただけでなく、SIIAの結果から、乳汁抗体が補体依存性細胞傷害活性を有すること、ならびにBLVのcell to cell感染を阻止することが示された。続いて、BLV感染牛6頭と非感染牛4頭から定期的に乳汁および血液を採材し、泌乳期間中の抗体価の変動を調査した。その結果、血中抗体価は分娩後日数によらずほぼ一定であった。一方、乳汁抗体価は分娩後3日目までは血中抗体価よりも高いが、5日目以降は急激に低下し、血中抗体価を下回ることが明らかとなった。非感染牛では、全検体から抗BLV抗体は検出されなかった。続いて、感染牛の初乳約3Lを用いてIgGの分離・精製を試みたところ、硫安沈殿法およびプロテインGカラムを用いることで、抗BLV抗体を含むIgGを精製可能であることが確認された。これらの結果より、分娩後3日以内の初乳から高濃度の抗BLV抗体を得られるものと考えられる。最終年度は、自然感染牛31頭について、初乳および血中抗体価、ならびに血中ウイルス遺伝子数(PVL)を測定した。乳汁抗体価を血中抗体価(128倍未満と128倍以上)およびPVL(100copies/10ng DNA未満と100copies/10ngDNA以上)の低値群と高値群で比較したところ、いずれも高値群で乳汁抗体価が高かった(ともにp<0.05)。このことから、血中抗体価ならびにPVLは、乳中抗体価の高い牛の指標となる可能性が示唆された。
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