研究実績の概要 |
H27年度の研究により、ニワトリのうま味受容体候補であるtaste-mGluR1, taste-mGluR4, brain-mGluR1, brain-mGluR4, T1R1, 及びT1R3のmRNAがニワトリの口腔組織及び消化管組織に幅広く発現していることをRT-PCRにより明らかにした。また、ニワトリはイノシン酸とグルタミン酸を混合添加した餌に対して強い嗜好性を示すが、それぞれを単独で添加した餌にはあまり嗜好性を示さないことを行動学的解析により明らかにした。これらの結果はニワトリがうま味を相乗的に感じる機構をもつことを初めて明らかにしたものである。 今までニワトリは甘味を感じることができないと言われてきた。しかし、種々の甘味物質に対する嗜好性を行動学的に検証したところ、数種類の甘味物質に対して嗜好性を示すことがわかった。また、甘味センサーの発現解析を行ったところ、数種の甘味センサー候補遺伝子がニワトリの口腔組織に発現していることを確認した。従って、ニワトリは甘味センサーを介して甘味物質を受容している可能性が考えられた。 カルシウムはニワトリにとって必須の栄養素である。急激な成長並びに日々の産卵もあることから、カルシウムの摂取は重要である。ニワトリがどのようにして口腔内でカルシウム味を受容しているか明らかにするため、受容体候補分子を検討したところ、ニワトリ口腔組織にカルシウム感知受容体CaSRが発現していることを明らかにした。CaSR遺伝子をクローニングし、カルシウムイメージングで検証したところ、ニワトリCaSRは細胞外カルシウムイオンを感知できることを明らかにした。 以上の結果より、ニワトリ味覚受容体群を数種同定することができ、ニワトリの味覚生理に関して重要な知見を得ることができた。これらの結果は新規飼料開発や味覚受容体を標的にした新規動物薬の開発に役立つと思われる。
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