研究課題/領域番号 |
26850211
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
水島 秀成 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 特命助教 (20515382)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鳥類卵 / クローン胚 / 胚発生 / 卵賦活化 / フォスフォリパーゼCzeta / アコニット酸ヒドラターゼ / クエン酸合成酵素 |
研究実績の概要 |
細胞核を鳥類卵へ移植して作出されたクローン胚の発生には、胚発生の開始に必須な卵賦活化の詳細な分子メカニズムの解明のほか、代理卵雌性核の不活化法の確立や、核の移植と卵賦活化のタイミングが重要であるため、それらの課題について検討を行った。 ウズラ卵の賦活化には、フォスフォリパーゼCzetaが誘起する卵細胞質全体に拡がる同心円上のカルシウム波とアコニット酸ヒドラターゼとクエン酸合成酵素が誘起する螺旋状様のカルシウム波の双方が必要であることが分かった。また同心円上のカルシウム波は、卵小胞体に発現するフォスファチジルイノシトール三リン酸受容体を介して誘起され、卵の減数分裂の再開に関与し、もう一方の螺旋状様のカルシウム波は、部分的にリアノジン受容体を介して誘起されることが分かり、これは胚細胞の細胞周期を亢進する働きがあることが判明した。 代理ウズラ卵の雌性核の不活化には、紫外線照射が効果的であることが分かった。しかしながら、5秒以上に渡る排卵直後に採卵した卵への照射は、核だけでなく細胞質にもダメージを与えることが分かり、3つの卵賦活化因子の投与にも関わらず、この卵では同心円上のカルシウム波が誘起され難いことが分かった。さらに5秒以下の紫外線照射ウズラ卵に細胞核と3つの卵賦活化因子を同時に投与し、卵培養を行ったところ、一部の胚において胚ステージの8まで発生が進行することが分かった。一方で、卵賦活化処理後、あるいは処理前の核移植によって発生したウズラ胚は無かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的であるクローン胚の発生に関わる細胞核の移植と卵賦活化のタイミングを決定することができただけでなく、代理卵の雌性核処理法(紫外線照射)の決定、そしてカルシウムパターンから紫外線処理による卵賦活化への影響を細分化することにも成功したためである。さらにウズラクローン胚の発生ステージも大幅に改良できたからである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に確立した条件をもとに、核移植発生胚のサンプル数を増やし、クローン個体の孵化育成を行う予定である。さらに始原生殖細胞や皮膚細胞などの体細胞を培養およびそれらの核を抽出・移植し、クローン胚の発生に最適な細胞核やその細胞周期を選別する。またウズラ細胞核だけでなく、ニワトリやシチメンチョウの体細胞核をウズラ卵へ移植し、各種鳥類への汎用性および種特異性を確認するとともに、マイクロサテライトマーカー等を用いて、移植核由来の胚発生であることを確認する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度中に、静岡大学から富山大学へ所属が変更となり、新しい実験室環境のセットアップに幾分かの時間を要する必要があった。そのため研究計画の一部の進行が滞り、それらに必要であった研究経費の一部が使用できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究計画と平行して、昨年度の研究計画で行うことのできなかった核移植卵のサンプル数を増やす実験を行う予定である。次年度への繰越金は、核移植卵の培養に必要な培養液の購入に使用する予定である。
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