研究課題
体細胞クローン動物の作出には、未受精卵から雌性核を取り除く工程が必要であるが、鳥類卵におけるその操作は、不透明な細胞質のために不可能であった。前年度の研究から、排卵直後の卵への紫外線照射が雌性核のダメージに効果的であることが分かり、その後の体細胞核移植によっても、紫外線照射卵は胚発生を開始できることが確認された。しかしながら、正常な卵割様式を示さない発生卵が多かったため、本年度では、紫外線照射に代わる別の方法を検討した。排卵されたウズラ卵の雌性核が卵管内を移動する過程で消失するという現象に着目し、顕微授精技術を駆使してそれがいつ起こるか調査したところ、排卵後10時間以降に核崩壊が起こっていることが分かった。また排卵後14時間以前であれば、フォスフォリパーゼCzeta(PLCZ)、アコニット酸ヒドラターゼ(AH)、クエン酸合成酵素(CS)のcRNA投与による同心円状と螺旋状様の双方の卵細胞質内カルシウムイオン濃度の上昇反応が誘起されることが分かり、それらの卵は発生能を保持していることが推測された。さらにウズラ卵割球細胞、孵卵10-12日胚由来の皮膚または筋原細胞核をPLCZ、AHおよびCS cRNAの混合溶液とともに排卵後10-14時間のウズラ卵に注入したところ、卵割球細胞および皮膚細胞核移植群において、その後の胚発生が確認された。しかしながら、筋原細胞核移植群において、発生したウズラ胚は無かった。またニワトリ体細胞核をウズラ卵へ移植したところ、ウズラ体細胞核移植群と同様に、卵割球細胞および皮膚細胞核移植群においてのみ胚発生が確認された。以上のことから、排卵後しばらく卵管を通過した鳥類卵は、除核操作を必要としない核移植用卵としての利用が可能であり、またそれらの卵は、近縁種を介した体細胞クローン鳥種の作出にも応用可能であることが示唆された。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 17643: 1-12
10.1038/srep17643
Reproduction, Fertility and Development
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1071/RD15126
The Journal of Poultry Science
10.2141/jpsa.0150132
10.2141/jpsa.0150183