これまで体節特異的に起こるホルモン応答がどのような分子機構で行われているのかを解明するために、Micro arrayおよびRNA sequenceを用いたgenome-wideな候補遺伝子の探索を行ってきた。そこで、本年度はさらに現象への関与を明確とするために、体節特異的現象の分子レベルでの解析も行った。 まず体節特異的に起こるホルモン応答シグナルの解析のために、体節特異的な細胞死の分子機構の解析をさらに進めた。予定細胞死は大きく2つに分類され、ひとつはアポトーシス、もうひとつは自己貪食(オートファジー)を伴う細胞死である。そこでアポトーシスに関わることが知られている因子とオートファジーに関連する因子の発現解析を行ったところ、それぞれの関連遺伝子が時期特異的に発現していることがわかった。またこれらの因子は細胞死を起こす体節でのみ選択的に発現されていた。さらに一部の遺伝子については、ホルモンにより発現が抑制されていた。加えてRNAiによるノックダウンによる検証を行うことにより、これらの因子が細胞死を誘導することが証明できた。今後これらの因子に対する他の体節特異的な因子の作用機構を解析することで、体節特異的なホルモン応答の解明につながる。 一方で、体節特異的に発現する遺伝子の解析を引き続き行った結果、明確な体節特異性を示す遺伝子が20個以上見つかった。そのなかで体節特異的にホルモンへと応答する遺伝子もおよそ40%程度確認された。その一部に対してRNAiによるノックダウンを行ったところ、それぞれの体節に特異的な現象が阻害された。加えて、一つの遺伝子についてはホルモン受容体への効果が認められ、今後さらなる検証を行うことで、新たなホルモン応答のスキームが見出されると期待できる。
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