本研究は、ヤマヨツボシオオアリにおいて高率に感染しているCamponotus yamaokai virusに関して、その宿主アリへの影響を解明することを最終目的として、そのために当該ウイルスへの感染個体と非感染個体の作出を試みた。実験としてはまずクロラムフェニコール、グアニジン塩酸塩、シクロヘキシミドの3種の薬物をショ糖水に混ぜて各3濃度作成し、ヤマヨツボシオオアリに投与した。その後、リアルタイムPCRによりウイルスの検出を行うことにより、各種薬物によるウイルス除去効果を見た。しかし実験の結果、これらの薬物処理によるウイルス除去効果は見られなかった。次に、高温および低温処理によるウイルス除去を試みたが、宿主アリの生存可能な温度範囲において、ウイルスの除去効果は見られなかった。また、当該ウイルスをヤマヨツボシオオアリと近縁であり、採集の容易なナワヨツボシオオアリおよびウメマツオオアリに注入したが、これらのアリが当該ウイルスに感染することはなかった。 実験を進めるに従って、ヤマヨツボシオオアリの巣内にCamponotus yamaokai virusに感染していない個体が少数であるが確認された。そこで当初の実験計画には無かったが、当該ウイルスに感染している女王アリと感染していない女王アリを用いて、それぞれの女王アリが産卵した個体のみからなる巣を作成した。作成後、巣内の働きアリから核酸を抽出し、リアルタイムPCRによりウイルスの検出を行ったところ、ウイルス感染のみられる巣では働きアリは高確率でウイルスに感染している一方、ウイルス感染のみられない巣では、働きアリにウイルス感染はみられなかった。
|