最終年度前半は、フルブライト研究員として、ニューヨークのニュースクール大学を基点に、本研究事業目的と相補的な都市農業・生態系、食農連携に関する現地調査を、ニューヨーク市および近郊地帯で実施した。本研究事業ではアジア都市郊外の歴史的・地理的要因による都市農村混在土地利用に着目しているが、それとは異なる原生的な自然の開拓により成立した農地景観と、資本が集約された都市景観が明瞭な当地において、生物資源調査を現地共同研究者と行う中で、本研究事業の最終目的である土地自然・文化に依拠した循環型社会を基調とした地域生態系計画のビジョンが定まった。ニューヨーク滞在中の成果は英語・日本語論文二本の投稿として結実し、これらの内容は本研究事業と相補的な構成となっている。 帰国後は卒論生の協力も得ながら堺市の生物資源循環調査成果のとりまとめ、補完的な追加調査を進め、研究のとりまとめに向けて順調に作業を進めることができた。また、今後のさらなる発展的研究展開を見据え、タイ王国チェンマイでも予備的な調査を実施した。これは別途地球研の事業経費にての渡航であるが、こちらも内容は本研究事業と相補的なものであり、現地大学研究者・院生との共同調査を進める中で、バンコクとは異なる特徴、すなわち農業生態系・食農ランドスケープが観光文化資源としても重要な機能を果たしていることを把握した。 この他、最終年度は、各種国際学会にも参加し、アジア型都市農村混在が発揮する生態系サービスの意義について、社会文化的背景の異なる地域から集う研究者間で有意義な討議をすることができた。
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