研究課題/領域番号 |
26850222
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
秀野 晃大 愛媛大学, 農学部, 助教 (30535711)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱分析 / バイオマス / リグノセルロース / 前処理 / セルロースナノファイバー / 酵素糖化 / 錠剤成型器 / 熱分解重量減少速度曲線 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、当初の研究計画に沿って(1)分離精製試薬およびその混合物を対象にした熱分析および標準条件の検討、(2)各種植物バイオマスを原料にした前処理物およびセルロースナノファイバー(CNF)の熱分析による基盤データの整備、の2つのサブテーマを実施した。 セルロースの標品としてAvicel PH-101を選択し、種々条件を検討した結果、試料量:約5 mg、昇温速度10 ℃/min、測定温度範囲:40~550℃、雰囲気:窒素(約100 ml/min)、リファレンス:α-Al2O3 を標準の測定条件とした。さらに試料の形状について検討した結果、ハンドプレスによって直径約4.5 mmの錠剤型に成型することで安定した測定データを得る事が可能になった。特にバイオマスで多く確認される綿状の不定形試料や、低密度で嵩高い試料において効果を発揮した。 リグノセルロース前処理試料の熱分析を行った結果、ヘミセルロースの減少に伴って熱分解重量減少速度曲線(以下、DTG曲線)のピークトップが、約340~350℃付近で無処理物よりも鋭くなり、微結晶セルロースの熱分解挙動と類似した。酵素糖化性が大きく増加したヒノキの前処理試料について熱分析を行った結果、共通点は、DTGピーク温度の低下のみであったが、大きく二つの種類に分類された。一つは精製セルロースの熱分解挙動に近似したオルガノソルブ処理試料であり、熱分析がセルロース精製度の目安になる可能性を示した。もう一つは、熱分解が大きく低温側にシフトすると共に、吸熱反応の低下が確認されたボールミル粉砕処理試料およびアルカリ-過酸化水素処理試料であり、へミセルロースおよびリグニンの変性の影響が示唆される。 さらに、蜜柑搾汁残渣およびコットンから種々条件で調製したCNFの熱分析を実施し、CNFに関して、セルロース純度や結晶化度と共に熱分解温度の基盤データを整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画に予定していた(1)分離精製試薬およびその混合物を対象にした熱分析および標準条件の検討、(2)各種植物バイオマスを原料にした前処理物およびセルロースナノファイバー(CNF)の熱分析による基盤データの整備、の2つのサブテーマを実施し、計画通り標準条件を決定し、基盤データを整備することが出来た為。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にしたがって、(1)前年度で得られたデータ群を基にしたデータマイニング、(2)食品廃棄物や植物バイオマス等の複合的なバイオマスの熱分析を基に選定した手法による発酵性糖生成およびCNF単離処理について検討する。ただし、(1)および(2)を精度よく実施する為に、各種バイオマスの熱分析データを随時追加する可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由を下記に示す。 (1)平成26年度は国内学会および国内講演が予定より増え、予定していた国際学会での発表を取りやめ、平成27年度に繰り越した為。 (2)平成26年度に異動した新しい所属先で、無料で拝借できる機器類があり、研究計画で予定した物品費より低く抑えることが出来た為。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、前年度と同様、消耗品を中心とした物品費が必要である。また、最終年度で研究成果を発表する機会が増えることが予想される為、国際学会および国内学会の参加費および旅費、論文発表における英文校正費および論文掲載費を当初の研究計画より増額計上する予定であり、前年度の繰り越し額を増額分に充足し、使用する。
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