平成26年度は、セルロースの標品としてAvicel PH-101を選択し、標準の測定条件を定めると共に、試料の形状について検討した結果、ハンドプレスによって直径約4.5 mmの錠剤型に成型することで安定した測定データを得る事が可能になった。次に、Avicel PH-101や、ヒノキ、ススキ等リグノセルロースの酵素糖化の為の前処理試料を用いて熱分析に関する基盤データ蓄積すると共に、柑橘類内皮やコットン、ヒノキからセルロースナノファイバー(CNF)を調製し、それらの熱分析に関する基盤データも蓄積した。 平成27年度は、整備した基盤データのDTG曲線を用いて、SplitGaussian法による分離、Levenberg-Marquardt法によるカーブフィッティングを行い、個々のピークに分離し、試料の組成変化等について予測可能と示唆される基盤データを構築した。それらのデータを整備していく過程において、ミスカンサス属の品種による前処理の効果の違いや、酵素糖化に対するボールミル処理の効果について、熱分析結果から推察できる可能性を示した。さらに、柑橘類内皮に共通して特徴的なペクチンおよびセルロースの熱分解に由来するDTG曲線の形状を明らかにすると共に、DTG曲線が柑橘系果皮等のペクチン系多糖を含むセルロース試料からCNFを調製する際の目安になる事を示した。また、ヒノキのオルガノソルブ処理試料の熱分析結果から、酵素糖化との相関を明らかにすると共に、Wise酸化試料の熱分析結果から、DTGピークを単一且つ鋭くしながら、低温領域の熱分解温度を僅かに起こす事で、ヘミセルロースを一部残しながらセルロースの純度を高め、CNF生成用の試料として調製可能になる事を示した。 DTG曲線から、バイオマスの種類を推測できると共に、発酵性糖生成の為の前処理法やCNF調製法を選択する際の判断基準になると期待される。
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