研究課題/領域番号 |
26850224
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
神藤 定生 名城大学, 理工学部, 助教 (90583865)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エチレン / シアノバクテリア / 酵素複合体 / Synechococcus / コヘシン / ドックリン / ACC合成酵素 / ACC酸化酵素 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、光合成細菌の光合成産物をバイオエチレンとして回収する研究である。さらに、嫌気性微生物のバイオマス分解システムを模倣した酵素複合体化技術により、エチレン生合成酵素を光合成細菌で効率よく機能させ、高効率なバイオエチレン生産のための基盤の開発を行った。 本年度では酵素複合体反応系の最適化を試みた。具体的には、既存の酵素複合体(SOC2)を構成するところの1-アミノシクロプロパン-l-カルボン酸合成酵素(ACS)およびACC酸化酵素(ACO)の酵素組成比を変更した。すなわち、ACSの酵素モル比を1から2へ(SOC3A)、ACOの酵素モル比を1から2へ(SOC3B)それぞれ変更し、それぞれ1.3倍、1.4倍のバイオエチレン生産効率向上を観察した。よって、酵素のモル比変更によるバイオエチレン生産効率の上昇理論値を得た。いっぽう、CO2削減効果の定量化に係る、二酸化炭素からバイオエチレンへの物質変換効率が明らかでない。そこで、構築したバイオエチレン生産株(SOC2およびSOC3B)のCO2吸収量とエチレン生産量を観察し、その比較を野生株(WT)との間で行った。結果、バイオエチレン生産株はより多くのCO2を吸収することを明らかにした。 以上より、光合成細菌で発現させたエチレン生合成酵素が複合体化によって効率よく機能し、二酸化炭素から光合成的にバイオエチレンを生産させる技術の確立が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成26年度においては、(1)コヘシンAcを2ヶ、コヘシンCtを1ヶ連結したキメラ軸タンパク質2B(Cip2B)の新規構築を行った。その結果、酵素複合体の酵素モル比を変更した新たな複合体を得た。(2)Rf,Ac,Ctの3種類のコヘシンを連結したCip3およびSAM-Docの新規構築と発現を行った。また、これらを用いてin vitroでの複合体形成試験を行った。現在、光合成細菌へ、これら新規構築したサブユニットを発現させるベクターの構築が進行している。(3)異なるプロモーターを組み込んだベクターの新規構築を行った。本年度では光誘導性プロモーターpsbA1を用い、バイオエチレン合成試験を行った。(4)CO2削減効果の定量化を目的に、二酸化炭素からエチレンへの物質変換効率を求めた。結果、エチレン生産量とCO2固定化量の相関関係を明らかにした。 以上より、当初の計画通り、おおむね順調に進めていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、既存の複合体(SOC2)および新規に構築した酵素複合体(SOC3AおよびSOC3B)に加え、SAM-Docを含む酵素複合体を用いたバイオエチレン生産効率を測定する。また、ACSの酵素阻害を回避させるため、Arabidopsis thaliana由来メチルチオアデノシン(MTA)ヌクレオシダーゼ(MTAN)1および2を新規に組み込んだ酵素複合体を構築する。MTAN1および2は、ACSの反応産物MTAをメチルチオリボースへ加水分解させ、これによるMTAのACS活性阻害が期待できる。さらに、これら酵素複合体シリーズを持つ光合成細菌の培養最適条件を検討し、より成果を上げるために精力的に研究を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、まず設備備品費として計上した、CO2削減効果の定量化に係る、二酸化炭素からバイオエチレンへの物質変換効率を求める実験に用いる、藻類培養基本システムの購入を取りやめ、安価な代替装置を導入したこと。また、初年度であり、研究成果が論文発表の水準にまでは達しなかった部分があり、論文投稿料などの執行を行わなかったため、その他経費が発生しなかったことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は新たに必要となる設備備品等は無いため、研究費は主に試薬やカラムなどの消耗品に使用する。また、得られた研究成果を論文として発表するための論文投稿料などに予算を充てる計画である。
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