研究課題
現代の社会は、プラスチックなどの化成品の大量生産によって支えられている。さらには、その原料ガスであるエチレンの生産過程において二酸化炭素が大量に排出される。二酸化炭素の削減を目的に、本研究は、光合成細菌の光合成産物をバイオエチレンとして効率よく回収する研究である。さらに、嫌気性微生物のバイオマス分解システムを模倣した酵素複合体化技術により、エチレン生合成酵素を光合成細菌で効率よく機能させ、高効率なバイオエチレン生産のための基盤開発を行った。本年度では、酵素複合体反応系の最適化を目的に、酵素の組成を改良し、生産効率を高めることを試みた。具体的には、メチルチオアデノシン(MTA)によるACSの活性阻害を回避させるためMTAヌクレオシダーゼ(MTAN)を既存の複合体へ組み込み、これらを構築し新規の酵素複合体(SOC3D1およびSOC3D2)を得た。すなわち、Arabidopsis thaliana由来cDNAクローンからMTAN1/2遺伝子を、Clostridium josuiゲノムDNAからCel8A由来ドックリン遺伝子を、それぞれPCR法で増幅させ、これらを融合させたキメラサブユニットAtMTAN1-CjdocおよびAtMTAN2-Cjdocを構築した。これらは既存の酵素複合体へ、A. thaliana由来MTAN1および2を新規に組み込んだ。つぎに、当該酵素複合体を発現するシアノバクテリアのバイオエチレン生産量を定量した結果、既存のstrain SOC2と比較して、strain SOC3D1は1.6倍のバイオエチレン生産量増加を、strain SOC3D2は1.9倍のバイオエチレン生産量増加をそれぞれ観察した。よって、酵素の組成変更によるバイオエチレン生産効率の上昇理論値を得た。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、平成27年度においては、構築した酵素複合体を光合成細菌で発現させ、バイオエチレンの生産効率を測定した。具体的にはH26年度に構築した酵素複合体(SOC3AおよびSOC3B)のみならず、本年度に構築した酵素複合体(SOC3D1およびSOC3D2)を保持するシアノバクテリアのバイオエチレン生産効率を測定した。以上より、当初の計画通り、おおむね順調に進めていると判断した。
平成28年度は、酵素複合体(SOC3D1およびSOC3D2)の培養最適条件を検討する。さらに、当該酵素複合体を導入した光合成細菌の二酸化炭素からエチレンへの物質変換効率を検討し、より成果を上げるために精力的に研究を展開する。
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FEBS Letters
巻: 589 ページ: 1569-1579
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PeerJ
巻: e1126 ページ: e1126
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