研究課題/領域番号 |
26850228
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
鈴木 透 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (20515861)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 鳥類 / 森林景観 |
研究実績の概要 |
本研究は、北海道江別市の森林パッチにおいて、指標生物である鳥類を対象として、①生物多様性の階層性や関連性、②生物多様性と景観との関連性を評価することで、森林を利用する鳥類の生物多様性の維持機構を解明することを目的とした。 その結果、江別市全体(地域スケール)と景観スケール(森林・農地・市街地)ごとにα・γ・β多様度を算出した。地域全体では22科50種の鳥類が記録され、景観別では森林景観においてパッチ別の平均種数であるα多様性が最も高く、農地景観と市街地景観では同様の値を示した。続いて、Diversity Partitioningを用いて景観と鳥類の多様性の関係を分析した。 地域スケールにおける多様性の維持機構では、広大な面積と多様な構造を持つ野幌森林公園のような森林景観では農地・市街地景観と比較して多様な種が生息している、つまり地域のβ多様性は大きくなると予測していたが、γ多様性へのα多様性の寄与が大きい傾向を示した。これより、北海道江別市の森林パッチを利用する鳥類の多様性は、野幌森林公園のような特定の森林景観により維持されているのではなく、景観の非代替性(Irreplaceability)は低いと考えられた。景観スケールにおける多様性の維持機構では、比較的均質な構造の森林パッチが多い農地・市街地景観では、多様な構造を持つ野幌森林公園のような森林景観と比較してβ多様性は低くなると予測していたが、全ての景観においてγ多様性へのβ多様性の寄与が比較的大きい傾向を示した。これより、北海道江別市の森林パッチを利用する鳥類はすべての景観において構造の不均質性(Heterogeneity)により種の多様性を維持していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①森林パッチの景観構造の定量化、②鳥類の多様性の把握、③生物多様性の階層性と景観との関連性の分析を実施することを予定している。森林パッチの景観構造の定量化については、衛星画像や空中写真から分析を進めている。また、鳥類の多様性の把握については、67地点の森林パッチにおける鳥類の種組成情報が着実に蓄積できているが、ICレコーダーにより得られたデータの一部については、鳥類の種組成データの作成には至っていない。生物多様性の階層性と景観との関連性の分析については、現在得られている鳥類の多様性情報から階層性に関する解析が終了し、来年度は森林パッチの景観構造との関係を分析する予定であり、順調に研究は実行されている。一方、得られた成果の学会発表を特段な事情により急遽キャンセルした。以上より、研究全体として「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
鳥類の多様性情報の蓄積、森林パッチの景観構造の定量化は予定通り進んでいるため、生物多様性の階層性と景観との関連性の分析を取りまとめ、学会発表・論文化を推進していく。そのため、ICレコーダーにより得られた鳥類の多様性情報に関して、研究補助員の協力を得ながら早急に分析して鳥類の種組成データを完成させる。また、生物多様性の階層性については現時点のデータを用いた分析が終了しているため、全ての鳥類の種組成データの完成後、再度解析を行い論文化していく。また、景観との関連性の分析についても、続いて分析を実行し、学会発表・論文化を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は学会発表が急遽キャンセルになったため、執行できず繰り越しとなった。また、人件費に関しては一昨年度から繰り越し分の処理が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
人件費については補助員を増員し対応する。また、論文執筆を推進することで英文校閲費として経常している経費を使用する。
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