研究課題/領域番号 |
26850229
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
笠井 敦 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員 (00597388)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トンボ / 越冬ステージ / 殺虫剤 |
研究実績の概要 |
茨城県つくば市近郊における水田地域において、水田利用性トンボの利用ハビタット調査をおこなった。コドラート法によるヤゴの調査は捕獲効率が極めて悪く、定性的な分布の確認ですら困難であることが判明したことから、定期的な羽化殻のカウントなどによる定量的調査がより有効と考えられた。なお、成虫の存在を調査地において確認したことから、付近に今回の研究対象の中心であるアキアカネ及びシオカラトンボが調査地付近において少なくとも産卵している可能性が高いと考えられたため、平成27年度も引き続き水田利用性トンボの発生状況を確認することで、これらの産卵の有効性を確認することが本研究において有効と考えられた。 茨城県つくば市近郊における水田地域において、イミダクロプリド及びフィプロニルの水中濃度及び土壌中濃度を測定するため、水及び土壌サンプルを採集し分析をおこなった。その結果、今回得られたサンプルにおいて、水からはイミダクロプリド及びフィプロニルは検出されなかった。また、土壌においても、イミダクロプリド及びフィプロニルは極低濃度が検出されるに留まった。 卵越冬型であるアキアカネ、及びナツアカネのメスを捕獲し、平成27年度におこなう急性毒性試験に用いるための卵を採集し、現在保存している。なお、これらの保存している卵の一部を用いて、温度条件を変化させることにより自然条件より早期の休眠打破を試みたが、急性毒性試験に耐えるだけの安定した打破条件を見つけることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヤゴの利用ハビタットを直接把握することを目的としたコドラート法が本研究において有効ではないことが判明したものの、本研究において調査地域のヤゴの分布パタンを確認する上で極めて重要である、調査地域に生息するトンボ相を成虫の見取り調査により把握することができた。 また、イミダクロプリド及びフィプロニルの濃度測定についても、調査地域の水、及び土壌サンプルの採集と分析を順次おこなっている。 急性毒性試験に用いるためのアキアカネ、及びナツアカネ卵の採集に成功し、現在試験に用いるため低温条件にて保存している。
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今後の研究の推進方策 |
水田利用性トンボ類ヤゴの利用ハビタット調査において、コドラート法が有効ではないことが判明した。しかし、それに代わる調査方法として羽化殻カウントが有効と考えられたため、平成27年度以降は調査地域での定期的な羽化殻カウントをおこない、加えて成虫の見取り調査と産卵確認を合わせておこなうことで、成虫の産卵場所とヤゴの発生場所の対応関係を確認する。 平成27年度以降も、平成26年度と同様に調査地域における水、及び土壌サンプル採集を継続し、イミダクロプリド、及びフィプロニルの濃度測定に供する。 平成27年度からは、昨年度に採集したアキアカネ、及びナツアカネの孵化幼虫を用いて、イミダクロプリド、及びフィプロニルの急性毒性試験をおこない、両種の半数影響濃度を算出する。また、シオカラトンボなどの幼虫越冬型トンボ類の卵も採集し、同様の急性毒性試験を実施する。 これらの結果から、イミダクロプリド、及びフィプロニルが各種トンボ類の利用ハビタットに及ぼす影響について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
フェノロジーの異なるトンボの分布パタンに合わせて農薬濃度測定地点を決定し、農薬濃度分析をおこなうため、平成26年度に実施予定だった分析の一部を平成27年度へ移行したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年のトンボ調査結果に応じて、農薬濃度測定地点を決定し、水及び土壌の農薬濃度測定を実施する。
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