研究課題/領域番号 |
26850232
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長野 稔 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (80598251)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 植物免疫 / ラフト / スフィンゴ脂質 / イネ |
研究実績の概要 |
本研究は、イネの自然免疫機構における膜ラフトの機能を解明することを目的とし、1. 病害応答性膜ラフト局在型OsRbohの同定と機能解析と、2. 新規の病害応答性膜ラフトタンパク質の同定と機能解析、の2つの解析を行っている。 本年度は1に関してはまず、候補であるOsRbohHのRNAi法によるノックダウン培養細胞(OsRbohH-KD)を作出し、キチンに応答した活性酸素種(ROS)量を測定した。その結果、イネ野生型(WT)培養細胞におけるROS産生量と変化がなかった。この原因はOsRbohH-KDでOsRbohBの発現が上昇していたためであると考えられたため、OsRbohBとOsRbohHのRNAi法による二重ノックダウン培養細胞(OsRbohB/H-KD)を作製したところ、キチンに応答したROS産生量がWTよりも大幅に減少した。また、酵母ツーハイブリッド法によって、OsRbohを活性化する低分子量Gタンパク質OsRac1と、OsRbohB及びOsRbohHが結合することも明らかにした。従って、イネにおけるキチン応答性膜ラフトタンパク質はOsRbohBとOsRbohHであることが明らかとなった。 2に関しては、キチン処理10、30分後における新規の病害応答性膜ラフトタンパク質の同定を、イネWT培養細胞と膜ラフト減少イネ培養細胞(OsFAH1/2-KD)を用いた比較プロテオーム解析によって行った結果、125タンパク質の同定に成功した。その中にはOsRbohHやOsRac1と同様にキチン処理後10分で増加し、30分で元に戻る一過性膜ラフトタンパク質が63タンパク質存在し、病害応答時における膜ラフトの重要性を解明するための足がかりとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病害応答性膜ラフト局在型OsRbohの候補に挙げていたOsRbohHだけでなく、OsRbohBもキチン応答性NADPHオキシダーゼであることを明らかにすることができた。また、大規模解析である新規病害応答性膜ラフトタンパク質の同定も順調に行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
病害応答性膜ラフト局在型OsRbohの同定と機能解析に関しては、まずOsRbohBとOsRbohHの膜ラフト局在解析を行う。具体的には、WTと膜ラフト減少イネのプロトプラストに蛍光タンパク質融合タンパク質を発現させ、膜ラフトの有無による局在の変化を共焦点レーザー顕微鏡で観察する。また、OsRac1との共局在解析も行う。さらに、これまでの解析から、OsRbohBはイネ植物体で、OsRbohHは培養細胞で発現が高いことを示している。そこで、RNAi法によるOsRbohBイネ植物体を作出し、いもち病菌感染実験を行うことで、OsRbohBが耐病性に関連したNADPHオキシダーゼであることを確認する。 新規の病害応答性膜ラフトタンパク質の同定と機能解析に関しては、昨年度同定した新規の病害応答性膜ラフトタンパク質の中でも一過性膜ラフトタンパク質に着目し、蛍光タンパク質融合タンパク質をイネプロトプラストで発現させ、共焦点レーザー顕微鏡で観察することによって、局在の確認を行う。その中でキチンに応答するタンパク質があればRNAi法によるノックダウン体を作製し、耐病性との関連解析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
顕微鏡実験を本年度中に実施できなかった、及びイネ形質転換体を作製できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
顕微鏡実験のための消耗品と出張費、及びイネの形質転換を行うための消耗品を購入するために使用する。
|