研究実績の概要 |
高等植物の葉の表皮に存在する気孔は、一対の孔辺細胞から形成された小孔であり、ガス効果や蒸散による水分放出の制御を行う。乾燥ストレス下で合成される植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)は、気孔閉口を誘導し、過度の蒸散を抑制する働きを持つ。孔辺細胞におけるABAシグナル伝達には、カルシウムイオンがセカンドメッセンジャーとして機能することが古くから知られている。 本年度は、孔辺細胞のABAシグナル伝達において、カルシウムイオン濃度上昇を認識し、気孔閉口に必須のイオンチャネルSLAC1の活性化を行うカルシウムイオンセンサータンパク質である4つのカルシウム依存性タンパク質リン酸化酵素CPK5, CPK6, CPK11, CPK23を同定した(Brandt, Munemasa et al., eLife 2015)。また孔辺細胞においてABAシグナルの負の制御因子であるタンパク質脱リン酸化酵素PP2Cが、ABAシグナル伝達の制御のみならず、刺激特異的カルシウムシグナル解読機構の制御に関与することを明らかにした(Brandt, Munemasa et al., eLife 2015)。 孔辺細胞に高発現するカルシウムイオンチャネルGCC1が、ABAに応答した孔辺細胞カルシウムイオン濃度上昇に関与するか否かを明らかにするために、カルシウム指示蛍光タンパク質イエローカメレオンを発現させたGCC1遺伝子破壊変異体を用いてカルシウムイメージングを行ったが不首尾であった。現在、カルシウムイオンに対するアフィニティーが異なる指示蛍光タンパク質を導入した組み換え植物体の作成を行っている。また、ホールセルパッチクランプ法を用いたGCC1の機能解析によって、GCC1はABAに応答したSLAC1活性化に関与することを明らかにした。
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