研究課題/領域番号 |
26860001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊藤 元気 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30610919)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 合成化学 / 不斉触媒反応 / ロジウム(II)錯体 / C-H挿入反応 / ネオリグナン |
研究実績の概要 |
今年度はロジウム(II)カルボキシラート錯体Rh2(S-PTTL)4を用いる分子内不斉C-H挿入反応の開発と応用研究を行い、以下の成果を得た。 (1) ジアゾ基質として従来顧みられることのなかったジアリールジアゾメタンのC-H挿入反応を機軸として(-)-マキシモールAの合成を行った。ヒドラゾンを二酸化マンガンで酸化して得られたジアリールジアゾメタンを単離することなく用いて分子内C-H挿入反応を行ったところ、Rh2(S-PTTL)4のフタルイミド基の水素原子をフッ素原子で置き換えたRh2(S-TFPTTL)4を触媒とした場合に(-)-マキシモールAのコア構造である2,3-ジアリール-2,3-ジヒドロベンゾフランが完璧なシス選択性かつ最高96%の不斉収率で得られた。溝呂木-Heck反応によってC5位にスチリル基を導入した後、BBr3を用いてC2位の異性化と脱保護をワンポットで行うことで(-)-マキシモールAを合成した。 (2) 分子内の適切な位置にアリルオキシ基を組み込んだα-ジアゾエステルの1,6-C-H挿入反応においてRh2(S-PTTL)4を触媒として用いると、cis-2-ビニルテトラヒドロピラン-3-カルボキシラートが完璧なジアステレオ選択性かつ最高95%の不斉収率で得られることが分かった。本反応では5員環オキソニウムイリド形成を経る転位反応や1,2-ヒドリドシフトによるアルケンの副生は見られなかった。また、アリールジアゾアセタートも基質として適用可能であり、シス配置のイソクロマン誘導体が収率68%、不斉収率85%で得られたが、オキソニウムイリドを経る転位体も収率15%、不斉収率40%で生成した。これらの結果はα-ジアゾエステルを基質とする分子内不斉1,6-C-H挿入反応の最初の例となる。今後、本法は含酸素6員環構造を有する生物活性天然物の合成への応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回ジアリールジアゾメタンのC-H挿入反応で得られた不斉収率(96%)は、(-)-マキシモールAのコア構造であるジヒドロベンゾフラン合成としてこれまでで最高の値である。分子内不斉1,6-C-H挿入反応はこれまでに一例しか報告されておらず、今後、含酸素複素環骨格を有する生物活性天然物の有力な合成法を提供するものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後はシス配置の2,3-ジアリール-2,3-ジヒドロベンゾフラン骨格をもつ(+)-マキシモールBの合成を検討する。また、ジアリールジアゾメタンの分子内不斉1,6-C-H挿入反応を展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を次年度に滞り無く継続できるよう年度末に若干の余裕をもった配分としたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分と合わせ、試薬およびガラス器具などの物品費として使用する。
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