前年度にまでに、目的の反応であるシクロプロパン上の第三級炭素-水素結合活性化を経る芳香環導入反応において、最適なダイレクティンググループを見いだし、光学活性な3置換アリールシクロプロパンの合成法開発を達成した。これら前年度の結果を受け、本年度は計画通りに、4置換アリールシクロプロパンの合成法開発への展開を検討した。 触媒に酢酸パラジウム、塩基に酢酸カリウム、溶媒にt-AmylOHを用いて、110℃においてヨウ化アリールと処理したときに、中程度の収率で芳香環を導入することが可能であった。反応の効率向上を目指し、ダイレクティンググループが反応に有利な立体配座を取りやすくするため、立体的に大きな保護基を導入した基質を合成し、本反応を検討した。その結果、期待通り収率が向上し、光学活性な4置換アリールシクロプロパンを高収率で合成する方法の確立に成功した。本反応は、複素芳香環を含めた種々の官能基を有する多様なヨウ化アリールに適応可能であった。本法は、シクロプロパンの官能基化を利用した光学活性4置換シクロプロパンの初めての方法となった。 さらに、本年度は、シクロプロパン上の第三級炭素ー水素結合活性化を経るアルキル基の導入反応も検討し、光学活性な3置換アルキルシクロプロパンの新しい合成方法の確立にも成功した。この方法は、炭素ー水素結合活性化を経る第三級炭素へとアルキル基を導入する初めての例となった。
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