研究課題/領域番号 |
26860004
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
植田 浩史 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50581279)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機化学 / 薬学 / 全合成 / 生物活性天然物 / アルカロイド / カスケード反応 / 金触媒 / 多環性複素環 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、カスケード型連続反応プロセスの開発を基盤とした、高次構造多環性アルカロイドの効率的全合成の遂行を目的とする。すなわち、現代の精密有機合成化学をもってしても合成困難な多環性複素環構造を有する生物活性天然物(キノリンアルカロイド、ステモナアルカロイド類およびユズリハアルカロイド類)の量的供給を目指し、それぞれ化合物を形成する多環性骨格を、比較的合成容易な鎖状基質から本方法論により迅速かつ効率的に構築する。本年度は、金触媒の炭素-炭素多重結合に対する反応性に着目し、連続環化反応を経る新規含窒素複素環構築法の開発を行った。その結果、カチオン性金触媒を用いた分子内連続環化反応による、新規キノリジジン合成法を確立した。本反応は、鎖状の基質から一挙に二環性骨格が構築可能であり、従来の段階的に環を構築する多段階合成法に比べ効率性に優れている。また、基質合成が容易で、各々のセグメントに置換基を導入できるため、収束的な多置換体合成が可能である。さらに、確立した本手法を応用し、生物活性天然物であるルピニンの全合成を達成した。続いて、申請者は、金触媒を用いた分子内連続反応を、分子間カスケード型連続反応へ応用することで、新規キノリン合成法も確立した。本キノリン合成法は、金触媒がアルキンの求電子性のみならず、求核性も活性化するオートタンデム型触媒反応である。 今年度確立したカスケード型連続反応は、いずれも基質合成が簡便であり、また、用いるアルキンを適宜変更することで、様々な置換様式を有する含窒素複素環への誘導が可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金触媒を用いたカスケード型連続反応の開発により、二環性複素環構造であるキノリジジンやキノリンの迅速合成法を確立した。さらに、本手法を用いた生物活性天然物であるルピニンの全合成を達成し、開発した反応の有用性を示すことができた。以上の理由により、本研究課題は、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、申請者が開発した分子内Mannich型連続環化反応を駆使し、ステモナアルカロイドが有するピロロアゼピン骨格を含む三環性骨格の構築法を確立している。28年度は、残るラクトン環の構築と有機触媒を用いた不斉Michael反応を展開することで、ネオステニンの不斉全合成を達成する。また、新たなカスケード型連続反応を開発し、第4級炭素や4置換炭素を含む7連続不斉炭素中心を有する高度に縮環した6環性アルカロイド化合物、カリシフィリン Bの世界初の全合成を達成する。
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