研究課題/領域番号 |
26860006
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
吉川 晶子 東邦大学, 薬学部, 助教 (30625017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 反応開発 / 錯体 / 酸化還元 |
研究実績の概要 |
研究代表者はこれまで、(1)遷移金属錯体の合成およびその物性解析、(2)典型元素を用いた炭素-炭素結合形成反応の開発、という異なる2分野の研究を行って来た。従来、遷移金属錯体の性質については主に錯体化学者が研究を進め、興味深い性質が多く明らかになっている。しかしこれらの性質(情報)は、最も基本的で重要な反応である炭素-炭素結合形成反応の開発にはあまり使われてこなかった。今回研究代表者は、「酸化還元活性な配位子を有する錯体(NIL錯体)」が非常に興味深い性質を持つことに着目した。NIL錯体は、多段階の酸化還元状態を有すことから、酵素反応のミミックなどとして一部の酸化還元反応に適用されてきたが、応募申請当時に炭素-炭素結合形成反応に適用した例はなかった。研究代表者は、このNIL錯体に、適切な酸化還元試薬を組み合わせることで、触媒的な炭素-炭素結合形成反応を開発できると考え、研究に着手した。まず中心金属として白金を有するNIL錯体を収率よく合成した。この錯体を触媒として、電子の移動(酸化還元)によって炭素-炭素結合が形成される基質を選び、酸素(酸化剤)存在下での反応を行った。その結果、触媒量以上の生成物が確認され、NIL錯体が触媒として反応に寄与していることが示唆された。現在は反応条件の精査を行っており、溶媒条件によって収率が大きく変動する事が明らかとなってきた。また触媒の溶解性が低く、反応の系外に出てしまうことから、触媒量の見直しおよび置換基導入を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究開始年度であった本年度に、研究代表者が所属機関を異動したため、研究環境が大きく変化した。応募申請時の研究室と現在の研究室では設備が大きく異なること、大学院生の補助が得られないことから、当初の計画通り研究を進めることは困難であった。 研究に必要な下地を整えることはできたため、次年度からは当初計画した順に反応開発を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
進捗で記したとおり、研究機関の異動により計画に遅れが出ている。当初の計画ではまず反応開発を行い、次いで活性錯体のバリエーションを増やす予定であったが、次年度はこれを並行して行う。錯体の性質を調べるチームと反応開発を行うチームを作り、情報共有しながら効率のよい反応開発を行う。現在、酸化剤の導入方法によって生成物の収率が安定しないことが課題として挙げられるため、反応容器や導入時間の見直しを行う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、「現在までの達成度」で示した通り、研究代表者の異動に伴い、研究の進捗が計画より遅れていることに由来する。研究が計画よりも遅れた結果、本来必要となる試薬類の購入費などが発生せず、また学会発表等にかかる費用も発生しなかった。以上のことから、予算よりも使用額が下回り、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度請求額と合わせ、今後の研究を効率よく遂行するために用いる。特に、研究代表者の異動により研究設備が変化したことを受け、必要な設備を有する外部機関の利用(依頼測定)を積極的に行うとともに、試薬の購入、研究結果の発表のための旅費などに充当する予定である。
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