研究課題/領域番号 |
26860009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長友 優典 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70634161)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 全合成 / ラクタシスチン / オオムラリド / 光反応 / C(sp3)-H直接官能基化 / 青色発光ダイオード |
研究実績の概要 |
【概要】我々は天然有機化合物や医薬品化合物の効率的な新規合成戦略を創出すべく、本年度は独自に開発した分子間および分子内C(sp3)-H結合のC(sp3)-C結合への直接変換反応を鍵とする、ラクタシスチンの全合成研究を推進した。 【方法・結果】(S)-ピログルタミノールから2工程で二環性ラクタムを合成した。これに対し、ベンゾフェノンおよび1-トシル-2-トリメチルシリルアセチレン共存下、水銀灯による光照射を行ったところ、C5位C(sp3)-H結合が化学・立体選択的に変換され四置換炭素を有する化合物が得られた。3工程の変換反応により1,2-ジケトンへと導き、続いてC9位へのアシル基導入を検討した。紫外光照射は複雑な混合物を与えたが、より長波長の青色発光ダイオードを光源として用いることで、高い歪みを有する三環性化合物を合成できることを見出した。得られた化合物はメタノール溶媒中、四酢酸鉛を作用させることでケトエステルへと変換できた。このように、2種のC(sp3)-H変換反応を用いて連続するカルボニルユニットの化学・立体選択的導入を達成した。 次に、ケトエステルからラクタシスチンの全合成へ向けた変換を行ったC6-C7二重結合形成を含む7工程にて合成中間体へと導き、C6位ヒドロキシ基導入の足掛かりとした。シリルアニオンの1,4-付加と続く玉尾酸化により既知化合物であるアルコールを得た。最後に、ベータ-ラクトン天然物(オオムラリド)を経る4工程の変換によりラクタシスチンの全合成を達成した。 【結論】我々は、C(sp3)-H直接変換反応の応用によりラクタシスチンの新規合成戦略を確立した。本研究成果により我々は有用有機化合物の合成に際して、C(sp3)-H直接変換反応を用いる合成戦略の有効性を実証できたと考えている。本成果は米国化学会誌のOrganic Lettersに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2種の光励起C(sp3)-H直接官能基化を鍵とする新規有機合成戦略の確立という本研究課題に着手してわずか一年足らずで当初合成標的としていた3つのピロリジノン骨格を有する生物活性アルカロイド(ラクタシスチン、オオムラリド、サリノスポラミドA)のうち2つの全合成を達成し、既に学術論文に掲載および日本薬学会年会にて発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は計画通り、光エネルギーをプロモーターとする2種のC(sp3)-H結合直接的官能基化反応を用いて、ピロリジノン骨格を有する生物活性アルカロイドサリノスポラミドAの実践的新規合成戦略を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が想定以上に順調に進展し、有機合成試薬などの物品費を抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はさらに挑戦的な課題に取り組み、国内外での成果報告を行うことを見越して、以下の様に経費を計上する。 物品費 1,064,649円、旅費 400,000円
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