研究実績の概要 |
新規な炭素間結合形成法に繋がる反応開発を目指した検討の中で、Brook転位を鍵とする新規カスケード型反応の着想を得ていた。 この着想を元に検討を行ったところ、アシルシランを基質としホスフィン求核剤とアルデヒドを用いた反応において、1,2-Brook転位により反応系中でイリドが生成しそのままWittig反応が進行することで、シリルエノールエーテルを高収率かつE体選択的に得られる事を見出した。一般的なケト化合物の脱プロトン化によるエノール化を経た合成法やHoner-Wadsworth-Emmons反応を利用した場合では、通常Z体優位にシリルエノールエーテルが得られてくることから、高E体選択性の反応は非常に有意義と言える。 さらに、同様の条件下得られるイリドとイミンとの反応において、加熱条件下にてシリルエノールエーテルがZ体選択的に得られる事を見出した。これら結果を元に、アルデヒドまたはイミンを用いてそれぞれの立体異性体を自由に作り分ける事のできる様な反応を目指して詳細な条件検討を行った。 また、用いるホスフィン、反応温度、反応溶媒、シリル基の嵩高さなど詳細な条件検討を行うことで選択性を改善することができた。 本反応は脱プロトン化のためにブチルリチウムなどの強塩基を用いることなくイリドを形成できる「salt-free条件」のWittig反応であるという特徴を有している。そこで、反応にアルデヒドまたはイミンを用いることでシリルエノールエーテルの両異性体がそれぞれ優位に得られてくる機構の解明のため、その詳細な検討を行った。
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