環境調和性に優れた従来法では達成困難な化学選択性の制御法の確立は、新規ケミカルスペースの開拓を可能とする次世代ツールとして注目を集めている。しかし触媒的に官能基本来の化学選択性を逆転・制御する手法は極めて限定的であり、その開発が強く求められている。本研究課題では、触媒によるアミノアルコールのヒドロキシ基選択的な反応開発を目的として研究を行った。これまでに、不飽和ニトリルを用いた触媒的化学選択的反応の開発に成功している。本年度では、さらに本結果を基により実用的な反応して、医薬品やペプチド、核酸誘導体のヒドロキシ基に、様々な官能基を直接的に導入することに成功した。本反応では、クリック反応へ適用可能なアジド基や、蛍光団であるダンシル基を導入可能で、ケミカルバイオロジーの分野における応用も期待できる。さらに本研究において特定のアミノアルコールのみを選択的に活性化可能な触媒反応も見出されている。本反応では無保護アミノ基を配向基として利用することで位置選択的な蛍光団の導入が可能となっている。また不飽和エステルを用いた反応の開発にも着手した。従来、不飽和エステルへの共役付加反応では、望みでないエステル交換反応が付随して進行してしまう問題点があった。今回はソフト金属共役アルコキシドを触媒的に生成することで。共役付加選択的な反応の開発に成功した。いずれの反応においても協奏機能触媒を用いることで、ルイス酸またはブレンステッド塩基を単独で用いた場合と比較して高い収率で目的物を得ることに成功している。
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