研究課題/領域番号 |
26860013
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
稲井 誠 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (20621626)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘジオトール A / プリンセピン / キノンメチド |
研究実績の概要 |
1. ヘジオトール Aの合成研究: ヘジオトール Aの合成は,既に検討を進めており,重要中間体ラクトンの合成まで完了していたので,その後の合成を検討するにあたり,まずラクトンの大量合成と全体収率の改善を行った.その結果,立体化学の構築にプロリン触媒を用いた交差アルドール反応が有効であることを見出し,さらに,ウレアを添加することで反応時間の短縮に成功した.さらに,大量合成可能となったラクトンと別途合成したアルデヒドを強塩基存在下反応させ,アルドール体を単一のジアステレオマーとして得た.続いて,得られたアルドール体を還元しトリオール体へと変換後,プロトン酸,ルイス酸について環化反応を検討した.その結果,塩化水素のジオキサン溶液を用いることで生合成を模倣した環化反応が進行し高収率にてフロフランリグナン骨格の構築に成功した,得られたフロフランリグナンに対し数段階の変換を経てヘジオトール Aの合成の全合成を達成した.
2. ベンゾジオキサン骨格合成法の開発: 申請者らの先行研究を基盤としてジアステレオ選択的 1,6 C-H 挿入反応または光延反応を用いて,プリンセピンに対応するベンゾジオキサン骨格の新規合成法を検討した.種々検討の結果,申請者らがカテキン合成にて見出したキノンメチド中間体を経由するジヒドロピラン環構築法の方法論が応用可能であるを見出した.すなわち,ベンジルアルコールに対し,塩化チオニル/メタノールの条件にてキノンメチドを生成することで,近傍のフェノール性水酸基から環化反応が進行し望むベンゾジオキサン骨格の構築を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した初年度の計画通りヘジオトール Aの全合成を達成した.また,プリンセピンに対応するベンゾジオキサン骨格の構築法も確立し,次年度中の全合成達成に十分な筋道をつけることができた.シュードテスガノールの合成に関しても,現在,デヒドロ体での合成を検討しており,成果が出始めている, 以上の結果は,概ね計画通りであるため,順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
1. ピリンセピン,シュードテスガノールの全合成経路の確立 今年度の結果を基盤としてピリンセピン,シュードテスガノールの全合成を達成する.ピリンセピンの合成では,今年度にベンゾジオキサン骨格の構築法を確立しており,この方法を基盤として全合成が達成可能と考えている.シュードテスガノールの合成に関しては,現在,デヒドロ体での合成を検討しており,今後,別途調製した,フロフラン骨格との鈴木-宮浦反応について詳細に検討する.
4. フロフランリグナン類の誘導体合成と生物活性評価 合成した ヘジオトール A,プリンセピン,シュードテスガノールとその合成中間体を,抗インフルエンザ試験,LDL コレステロール抗酸化試験などの生物活性試験に提供する.生物活性試験の結果を誘導体合成へフィードバックし,フロフランリグナン類の化合物ライブラリーを構築する.さらに,構造活性相関研究を行うことで構造の簡略化,より高い生物活性を持つ誘導体を創出する.研究が計画より速く進んだ場合は,同位体ラベル化や蛍光プローブ化を行い,体内動態研究に化合物を提供する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ロータリーエバポレーター、キラルカラムやダイヤフラムを購入したが、当初の見積価格より価格が安かったため。
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次年度使用額の使用計画 |
余剰分は、試薬、ガラス器具等の消耗品と、キラルカラムを購入する予定である。これにより、研究の進行速度が速くなると予測できる。
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