海洋産アルカロイドスピロリドDの初の全合成を目指し、二つのフラグメントの立体選択的合成について研究を行った。 BCD環フラグメント(ジスピロケタール環部)の立体選択的合成は昨年度に達成したため、本年度はその量的供給に着手した。しかしながら、出発原料として用いていた市販の光学活性エステルの価格が高騰したため、代替原料を探す必要があった。結果として、ロジウム触媒を用いた不斉水素化反応がC13位不斉中心の立体選択的構築に利用可能であり、安価なイタコン酸に対して6工程の変換を行って、以前の合成中間体であるジチアンに導くことができた。 E環部については分子間Diels-Alder反応により構築することにした。グルタミン酸から調製可能な文献既知の光学活性ラクトンから7工程の変換でエノールトリフラートを合成した。続いて、本化合物と別途マンニトールからCorey-Fuchs反応を含む5工程で調製したボロン酸エステルとの鈴木―宮浦カップリング反応により、アリル位に不斉中心を持つジエンを得た。求ジエン化合物は文献既知であり、入手容易な不飽和エステルから、C31位、C32位二連続不斉中心の立体選択的構築、ラクトン環形成、エキソメチレン基の導入など14工程によりグラムスケールで調製した。得られた両化合物を用いて加熱条件下でDiels-Alder反応を試みたところ、付加環化体が異性体混合物として得られた。異性体を分離してNOESY実験を行ったところ、望みの異性体が主生成物であることがわかった。
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