昨年度に引き続き、本研究では申請者が見出した「コバルト触媒と求電子的フッ素化剤を用いたオレフィンの活性化機構」を基盤にして、医薬品などで重要な光学活性複素環化合物合成を目的としている。昨年度に開発したオレフィンの分子内ヒドロアミノ化反応に引き続き、本年度は含酸素複素環化合物合成を目的として分子内ヒドロアルコキシル化反応および分子内ヒドロアシルオキシ化反応の開発を行った。 分子内ヒドロアルコキシル化反応および分子内ヒドロアシルオキシ化反応によって、5員環から9員環までの環状エーテルおよびラクトンを合成することに成功した。特に7員環以上のいわゆる中員環合成においては、医薬品や天然物中に当該構造が良く見られるものの、ヒドロアルコキシル化反応による構築はほとんど例がないことから、本コバルト触媒反応の有用性が示されている。加えて、エステルを基質としたヒドロアシルオキシ化反応においても、様々な5および6員環の生成物が得られている。また本反応の優れた官能基許容性も確認されているため、他種の反応基質へと適用可能となる。以上、本計画の一つ目の軸である、分子内環化の一般性検討は概ね終了した。 引き続き、二つ目の軸である不斉反応開発については現在も継続して検討している。改善の余地を残しているものの、分子内ヒドロアルコキシル化、アミノ化、アシルオキシ化反応において、まだ不斉収率に改善の余地を残しているものの、様々な反応を不斉反応へと展開できることを見出している。
|