研究課題
本研究では、核酸医薬を含む機能性核酸の疾患治療効果の飛躍的向上を目的に、多足型構造を形成するDNA(polypodna)を基盤とする酵素反応を用いないデンドリマー型DNA(DL-DNA)を開発し、癌免疫療法に有効な新規デンドリマー型核酸ナノDDSを創出することを目的とする。これまでに、CpGモチーフを含むDL-DNAを新たに作製し、免疫細胞の活性化の指標としてマクロファージ様細胞株RAW264.7からのTNF(tumor necrosis factor)-a産生量を測定した。その結果、第1世代DL-DNAの核としてpod数が6のhexapodna、殻としてpod数が3のtripodna構造を有するDL-DNA(DL-DNA(6-3))がRAW264.7細胞から最もTNF-a産生を誘導した。一方、非接着性の突出末端を有するhexapodnaと殻のtripodnaを混合した場合には、電気泳動の結果からDL-DNAの構造は確認されず、RAW264.7細胞からのTNF-a産生量の増大も認められなかった。そのため、CpG DNAの免疫活性化能の増強には、デンドリマー型構造が有用な構造であると推察した。さらに、DL-DNA(6-3)によるTNF-a産生の結果とRAW264.7細胞によるDL-DNAの細胞取り込みの結果との間には、正の相関が認められたため、デンドリマー型DNAの免疫細胞の活性化には細胞取り込みの増大が関与すると推察した。さらに、デンドリマー型DNAを構成するpolypodnaは、正多面体構造を有するDNAおよび多方晶構造を有するDNAと比較して、熱に対する安定性に優れており、RAW264.7細胞やヒト末梢血単核球(PBMC)から効率的にサイトカイン産生を誘導することも明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた、デンドリマー型DNAの細胞との相互作用、免疫刺激性デンドリマー型DNAの構築と最適化に関する評価は、おおよそ完了した。
平成28年度は、デンドリマー型DNAの免疫アジュバントとしての生体応用を進めるとともに、抗原デリバリーシステムとしての有用性を当初の予定通り評価し、癌免疫療法に有効なpolypodna構造を基盤としたデンドリマー型核酸ナノDDSの開発を進める。
次年度使用額が、物品の購入に利用不可能な程度に少額であったため。
次年度使用額は極めて少額であるため、主な使用計画の設定は行わない。そのため、研究計画は変更しない。
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Nucleic Acid Therapeutics
巻: 25 ページ: 245-253
10.1089/nat.2014.0524.