研究課題/領域番号 |
26860023
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三次 百合香 九州大学, 薬学研究科(研究院), 特任助教 (80707175)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | キラルアミノ酸 / メタボロミクス / 光学分割 / 二次元HPLC |
研究実績の概要 |
平成26年度は、応募者らがこれまでに開発した二次元HPLC分析装置を基盤として、D体とL体を区別する尿中キラルアミノ酸メタボローム解析の専用装置開発を行った。 一次元目の逆相分離においては、九州大学薬学部(浜瀬健司)および研究協力企業㈱資生堂と共同開発したモノリス型キャピラリーカラムを用い、タンパク質構成全アミノ酸20種にイソロイシンとスレオニンのアロ体を加えたアミノ酸22種の相互分離並びに尿中夾雑成分との分離条件を検討した。その結果、移動相としてトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル、テトラヒドロフランおよび水の混合液を用いることで、10時間以内で相互分離を達成した。 二次元目の光学分割については、分析対象のキラルアミノ酸21種について微量成分であるD体がL体よりも先に溶出し良好な光学分割が得られ、かつ尿中で大きな夾雑成分が存在しないキラルカラムが不可欠である。そこで、市販のパークル型およびキナ皮アルカロイド誘導体型キラル固定相、九州大学薬学部および㈱資生堂と共同開発した新規キラル固定相を用いて、キラルカラムのスクリーニングを行った。その結果、共同開発した新規キラル固定相、Sumichiral OA-2500S、OA-3200S、OA-4700SRカラムにおいて、多くのキラルアミノ酸が良好に光学分割され、D体がL体よりも先に溶出した。そこで、ヒト尿試料を用いて尿由来の夾雑成分と分離するため、光学分割における移動相条件の検証・最適化を行った結果、共同開発した新規キラル固定相とOA-3200Sカラムの2種を使用することにより、尿中キラルアミノ酸の良好な分離が達成された。また、本分析システムを用いてヒト尿中D-セリン、D-アルギニン、D-アラニン、D-アスパラギン、D-グルタミン酸の良好な分離が可能であり、尿中キラルアミノ酸メタボローム解析装置の構築が達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は、応募者らがこれまでに開発した二次元HPLC分析装置を基盤として、D-アミノ酸とL-アミノ酸を区別する尿中キラルアミノ酸メタボローム解析の専用装置を開発するため、カラムや移動相条件の精査を行う計画だった。本年度では、一次元目の逆相分離条件の確立、二次元目の光学分割カラムの選定、移動相条件の確立に成功しており、当初の計画どおり、尿中キラルアミノ酸メタボローム解析装置の構築を達成した。また、平成27年度実施計画であった、「ヒト尿試料を用いて尿由来の夾雑成分と分離するための逆相分離および光学分割における移動相条件の検証・最適化の検討」についても平成26年度中に進行しており、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、引き続き、ヒト尿試料を用いて尿由来の夾雑成分と分離するための逆相分離および光学分割における移動相条件の検証・最適化を進め、標品および尿試料を用いて分析装置のバリデーションを行い、定量的メタボロミクス装置として完成させる。また、九州大学薬学部(浜瀬健司)および研究協力企業㈱資生堂と逆相カラムおよび高性能キラルカラムの開発、自己作製を行い、カラムの安定供給実現のための検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は「光学分割カラム購入費」として200,000円程度予定していたが、光学分割カラムについて、九州大学薬学部および(株)資生堂との共同研究により効率的作製に成功しており、光学分割カラムより安価なキラル充填剤を購入し自己充填して使用したため、差額が生じた。また、蛍光検出器の使用法の改善を行うことにより、キセノンランプの消耗が軽減されたため、キセノンランプの購入費が抑えられ差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、選択性向上のため質量分析計の利用を計画している。LC-MS用の溶媒は平成26年度に使用していたHPLC用の溶媒よりも高価であるため、平成26年度の差額分を充てる。また、質量分析計はシステムのダウンサイジングにより高感度化が期待される。平成27年度は光学分割カラムのミクロ化を検討するために、ミクロカラムの作製費に差額分を充てる。
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