平成28年度は、D体とL体を区別する尿中キラルアミノ酸二次元HPLC分析装置の連続安定稼働および高性能化を実現するため、研究協力者の九州大学薬学部の浜瀬健司および協力企業の株式会社資生堂と高い分離能を有する逆相カラムおよび光学分割カラムの開発と尿中における高性能メタボロミクス分析法の開発を行った。一次元目の逆相カラムにはカラム長1メートル以上のモノリス型オクタデシルシリカカラムを使用し、分離条件の最適化により再現性および分離能の向上を達成した。二次元目には高分解能光学分割カラムを搭載し、移動相条件やカラム洗浄条件の最適化を行った。その結果、タンパク質構成アミノ酸とアロイソロイシン、アロスレオニンを加えた21種のアミノ酸について1本のキラルカラムによる光学分割を達成し、連続安定稼働可能な実用機の開発に成功した。 尿中に多く認められるD-アスパラギン、D-セリン、D-アラニンおよびD-プロリンの由来解析を行うため、無菌マウス尿中含量解析を実施した。その結果、D-アラニンは尿中含量が激減し主に腸内細菌由来であることが示され、D-アスパラギンおよびD-セリンは一部が腸内細菌に由来していることが明らかとなった。D-プロリン含量は無菌マウスにおいてほとんど変化が認められず、腸内細菌に由来しないことが示された。 また、虚血再灌流腎障害マウスにおけるキラルアミノ酸メタボロミクスを進めた。その結果、コントロール群と比較して虚血再灌流4時間、8時間、20時間、40時間後における尿中アスパラギン、セリン、アラニンおよびプロリンのD体の割合(%D=D/(D+L)*100)が有意に減少することが明らかとなった。また尿中アルギニン、バリン、フェニルアラニンおよびリジンの%Dの減少も認められ、これら8種のキラルアミノ酸が腎障害マーカーとなり得る可能性を示した。
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