研究課題/領域番号 |
26860024
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱野 展人 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 特任助教 (80708397)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | イメージング / 脳へのターゲティング / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
医療が発達した現代においても、脳の疾患は、脳腫瘍やアルツハイマー、パーキンソン病に代表される難治性疾患が数多く存在する。難治性である理由の一つは、血液脳関門 (Blood-Brain-Barrier: BBB) の存在である。BBBが障壁となり、薬物が脳内に移行せず、他臓器のように治療・診断することができないことから、本研究では、脳組織に対する造影剤としての機能も併せ持つ脳内移行型カプセルの開発を目的とする。 本年度では脳内移行型カプセルの作製並びにその物性評価と標的指向能の評価を行なった。カプセル作製の基盤としては、24量体と自己形成するsmall heat shock protein (sHsp)を用いた。脳内への移行能を付与する物質として、脳や脳血管内皮細胞に高発現しているとの報告があるアセチルコリンレセプター (AchR)を認識し、脳移行性を示すRVGペプチドを、遺伝子組み換えによってsHspに組み込み、大腸菌を用いて発現させた。結果、得られたタンパクは大部分が可溶性タンパク質であり、サイズ排除クロマトグラフィーにて精製した後、その粒子径並びにゼータ電位を測定した。粒子径がおよそ20 nm、ゼータ電位がおよそ-10 mVとなり、ペプチド未修飾のタンパク質 (粒子: 12 nm、ゼータ電位: -15mV)と比較しても大差がないナノカプセルであることが示された。 次に本ナノカプセルの標的指向能を、AchR高発現細胞であるNeuro2aと低発現細胞であるHeLaを用いて, フローサイトメトリー並びに共焦点顕微鏡により, 本ナノカプセルの標的指向能を評価した結果、AchR高発現細胞であるNeuro2aにのみ効率よく細胞内に取り込まれたことから、今回作製したRVGぺプチド修飾ナノカプセルはAchR特異的であることが示唆された。更に健常マウスを用いたin vivoでの検討においても、RVGぺプチド修飾ナノカプセルは脳周辺に集積していることが明らかとなった
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、脳内移行型カプセルとしてRVGペプチド修飾タンパク質型ナノカプセルを作製し、脳への移行性に重要と考えられるAchRに特異的であること、またin vivoにおいても、脳周辺に集積していることを明らかとした。一方で、脳内移行のメカニズム、並びに脳実質組織の局在という課題を残していることから、現在までの達成度として、やや遅れていることとした。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、インドシアニングリーン (ICG)、並びにMRI造影剤の搭載を図る。 ICGを搭載するにあたり、本カプセルがタンパク質からなることを応用し、タンパク質のアミノ基と反応するよう、活性エステル基の化学修飾を施したICGとカプセルを反応させ、ICGの固定化を試みる。先にICGを搭載させ、その効果をin vivo imagingで評価するとともに、他臓器への分布等についても評価を行なう。 また、MRI造影剤に関してはマレイミド基の化学修飾を施したGd-DTPA錯体を用い、タンパク質カプセルの内孔にシステインに固定化することを計画している。はじめにMRI装置を用いて、MRI造影能の評価を行ない、造影効果を確認後、マウスを用いたデュアルイメージングに関する検討へと移行する予定である。 また、並行して蛍光ラベル化したタンパク質型ナノカプセルを用いて、脳組織の局在、移行メカニズム、安全性についても検討を続けていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究を遂行するに必要な消耗品・器具の一部を、在籍している研究室内で賄うことが可能であったため、その額の分次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
主に、本研究を遂行するに必要な動物、および蛍光試薬、造影剤などに充てる予定である。 また、本研究結果の発表および最新の研究情報収集のため学会への参加、並びに学術論文として公表する際にかかる費用としても使用する予定である。
|