医療が発達した現代においても、脳の疾患は、脳腫瘍やアルツハイマー、パーキンソン病に代表される難治性疾患が多く存在する。難治性である理由の1つは血液脳関門 (Blood-Brain-Barrier: BBB)の存在である。BBBが障壁となり、薬物が脳内に移行せず、他の臓器のように治療・診断をすることができないことから、本研究では、脳組織に対する造影剤としての機能も併せ持つ脳内移行型カプセルの開発を目的とする。 前年度までに脳内移行型カプセルの作製・物性評価・標的能の評価を行い、本カプセルは負電荷を有する20 nm前後のナノカプセルであること、アセチルコリンレセプターを特異的に認識することが明らかとなった。 そこで本年度ではin vivoでの脳内への移行性を検討した。In vivo イメージングにおける検討で、脳周辺に集積していることが明らかとなり、更に脳組織を取り出し、脳を1 mmのスライスにすることで脳組織内への移行性についても評価を行った。結果、脳標的型ナノカプセルの一部は、従来型のカプセルと比較し、大脳や小脳に移行していることが明らかとなった。次に本ナノカプセルの脳内移行メカニズムについて検討した。しかしながら、どの経路で移行しているのかは明らかとならず、メカニズムについては今後の検討課題となることとなった。またメカニズムの検討を重点的に行っていたこともあり、MRI造影剤の搭載までは完遂させることはできない結果となった。一方で、自然発生神経芽腫モデルに対して一部標的性が示唆されたなど、本ナノカプセルの臨床応用への新たな可能性も見いだすことができた。 以上、当初のデュアルイメージングを実施するには到らなかったものの、脳内への移行が可能な新規ナノカプセルとして有用であることが示された。今後、脳内移行メカニズムや神経芽腫への標的性について引き続き検討していきたい。
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