平成27年度までの研究結果より,付着力の強い物質の微粉末は,核粒子がなくても,機械的処理によって凝集造粒することで球形粒子となることが示唆された.平成28年度では,凝集造粒機構を利用した薬物結晶の球形化法を検討した.テオフィリンの無水物と水和物をジェットミルしたものを用いた.テオフィリン無水物は,機械的処理によってわずかに造粒したが,球形粒子を得ることができなかった.以前の研究結果より,粒子径50μmのテオフィリン無水物を機械的処理すると,比較的な大きな結晶に微粉末が取り込まれる被覆造粒が起こり,球形粒子となった.本検討では,微粉砕品を用いたことで,被覆造粒の核粒子となる大きな粒子が存在しないため,造粒が起こらなかったと考えられる.この結果より,テオフィリン無水物は凝集造粒機構によって球形化できないことが示された.一方,テオフィリン水和物は機械的処理のせん断強度を上げるにつれて,造粒が起こり球形粒子を生じた.無水物と水和物の挙動の違いを解明するため.粉末X線回折法により結晶性を評価したところ,機械的処理によって無水物の変化は確認できなかった.一方,水和物では機械的処理が進行するにつれて無水物の回折ピークが出現したため,水和物の一部が機械的処理によって脱水し,無水物になったと推察した.水和物含量を定量化するため,熱質量分析を行ったところ,機械的処理によって水和物の10%程度が脱水し,無水物となったことが判明した.このことは,水和物の脱水によって,処理粉体質量に対して約1%の遊離水が生じたことを示唆している.以上より,テオフィリン水和物は,機械的処理によって一部が脱水し,生じた遊離水によって付着力が増大することで,凝集造粒機構によって球形化することが示唆された.よって,付着力の弱い物質であっても付着凝集性を付与することで,凝集造粒機構により球形化できることが示唆された.
|