研究課題/領域番号 |
26860029
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
奥田 知将 名城大学, 薬学部, 助教 (20513857)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自己組織化ナノ粒子 / 吸入粉末剤 / siRNA / 粒子設計 / 核酸デリバリー / 噴霧急速凍結乾燥法 / 多孔性微粒子 |
研究実績の概要 |
本年度には、粉末微粒子溶解後に形成するsiRNA/脂質ナノ粒子について、siRNAとナノ粒子の結合性ならびに細胞内取り込み能を評価し、ナノ粒子を構成するPEG誘導体の影響について検証した。また、遺伝子発現抑制効果のさらなる向上に向けて、ナノ粒子を構成するカチオン性脂質の種類について最適化を進めるとともに、siRNA/脂質粉末微粒子の肺内投与による遺伝子発現抑制効果を評価した。 電気泳動によるsiRNAとナノ粒子の結合性評価の結果、PEG2000-Chol > PEG5000-Chol > PEG2000-DMPEの順に結合性が強い傾向が認められた。また、蛍光標識siRNA/脂質ナノ粒子を添加した培養細胞の蛍光顕微鏡観察による細胞内取り込み能評価において、結合性評価の結果と同様にPEG2000-Chol > PEG5000-Chol > PEG2000-DMPEの順に細胞内で多くの蛍光が検出された。これらの結果より、加えるPEG誘導体の種類によってsiRNAとの結合性ならびに細胞内取り込み能が異なったナノ粒子を形成し、これらの性質は密接に関連している可能性が示唆された。 DOTAP、DOTMA、DODMAの3種のカチオン性脂質を用いて調製・形成したsiRNA/脂質ナノ粒子について、培養細胞での遺伝子発現抑制効果ならびに細胞毒性を総合的に評価・比較した結果、DOTMAが最適であると判断した。さらにDOTMAとDODMAを組み合わせることで、DOTMA単独よりも細胞毒性を高めることなく遺伝子発現抑制効果を飛躍的に向上できることを新たに見出した。 ルシフェラーゼ安定発現癌細胞を尾静脈内投与することで樹立した肺転移癌モデルマウスにおいて、ルシフェラーゼに配列特異的なsiRNA/脂質粉末微粒子の肺内投与群では未投与群と比べて肺内発光強度 (ルシフェラーゼ発現量に相当)の経時的な増加が小さい傾向が認められ、肺内遺伝子発現抑制効果の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究実施計画のうち、本年度には『siRNA/脂質ナノ粒子による遺伝子発現抑制効果および細胞毒性の決定因子の追究』および『siRNA/脂質粉末微粒子肺内投与後の遺伝子発現抑制効果の評価 (in vivo)』の2項目に着手し、上記の様にある程度の成果を挙げることができた。また、当初の計画以上の成果として、カチオン性脂質の種類の最適化を進めることができた。一方、『siRNA/脂質粉末微粒子分散添加後の遺伝子発現抑制効果、細胞毒性、およびsiRNAの細胞内取り込み・細胞内動態の評価 (in vitro)』については、未だ着手できていない。 本年度に限定すれば、年間を通してある程度予定していたとおりに研究計画を遂行することができたものの、昨年度の長期海外留学で生じた遅れを取り戻すまでには至っていない。 以上の点から判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では本年度が当該研究期間の最終年度となっているが、研究計画を完遂することができなかったために補助事業期間の延長を申請し、承認を得ることができた。 来年度には、まだ実施できていない『siRNA/脂質粉末微粒子分散添加後の遺伝子発現抑制効果、細胞毒性、およびsiRNAの細胞内取り込み・細胞内動態の評価 (in vitro)』を中心に研究を進めていく。本年度に行った細胞内取り込み能の評価については、細胞内取り込み機構 (エンドサイトーシスの関与)ならびに細胞内局在性 (エンドソームおよび細胞質)の情報を得るには至っておらず、今後、蛍光標識siRNA由来の蛍光顕微鏡画像と染色したエンドソームの蛍光顕微鏡画像の重ね合わせを利用して、これらの情報を取得していく。また、『siRNA/脂質粉末微粒子肺内投与後の遺伝子発現抑制効果の評価 (in vivo)』についても予備的な検討に留まっており、今後、siRNAとしての投与量を変えるとともにルシフェラーゼに配列非特異的なコントロールsiRNAを用いて評価を進め、遺伝子発現抑制効果の投与量依存性と特異性について明らかにする。そこで得られた投与量情報を基にして『siRNA/脂質粉末微粒子肺内投与後の肺障害性の評価 (in vivo)』を再度行い、遺伝子発現抑制効果と肺障害性の関係性を明確にしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間の延長承認申請に際し、次年度に行う動物実験に要する費用が高額になると予想され、次年度に持ち越す方が適当と判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬、実験動物、細胞培養品など研究用の物品購入費に当てる。
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