研究課題
ロタウイルス高感受性細胞(MA104細胞)の表面糖鎖プロファイルをもとに、20種類の糖鎖を選択し、それらを固定化した糖鎖アレイを作成した。作成した糖鎖アレイを用いて、2種類のヒトロタウイルス(MO株と及びHAL1166株)と1種のサルロタウイルス(RRV株)の認識糖鎖をスクリーニングした。いずれのロタウイルスも、Galactoseの6位が硫酸化された糖鎖及び、N-glycolylneuraminic acid(NeuGc)に強い親和性を示した。この結果から、この2種類の糖鎖に対する親和性は多くのロタウイルス株で保存されており、ロタウイルスの感染、増殖において極めて重要な役割を担っていると考えられる。一方各ウイルス株に特徴的な認識糖鎖も観察された。サル由来のRRV株では、他の2種類のヒト由来ウイルスでは観察されないN-acetylneuraminic acid(NeuAc)との強い相互作用が観察された。ロタウイルス高感受性細胞をNeuraminidaseで消化した場合、ヒト以外の動物種から単離されたにロタウイルスの宿主細胞への感染効率が低下することが報告されている。したがってRRV株の感染においては、NeuAcとウイルスの相互作用も非常に重要になると考えられる。一方、HAL1166株では、他の2種類のウイルスで観察されなかったA型抗原と強い相互作用を示した。Hu らは、HAL1166株由来のリコンビナントスパイクタンパク質(VP8)の認識糖鎖を解析した結果、A抗原と反応することを見出しており(Nature. 2012年)、今回の我々の結果と相関している。また、MO株ウイルスでは、αGalNAcと相互作用が見られている事が特徴であった。以上の検討結果から、20種類の糖鎖を固定化したアレイを使用することで、3種類のウイルスを識別できることが明らかになった。
3: やや遅れている
当初は10種類以上のロタウイルスの認識糖鎖の解析を予定していたが、ロタウイルスの供給法がうまく確立できなかったため、3種類のウイルス株しか解析できていない。現在、ロタウイルスの効率的な増殖法について検討しており、供給法の確立を行っている。この点が改善できれば、研究計画を迅速に進めることが可能になる。
まずは、昨年の遅れを取り戻すため、ロタウイルス供給法を確立し、ウイルス認識糖鎖解析を進める。また同時に、ウイルス粒子上に発現する糖鎖の構造解析を行う。特に、今年度認識糖鎖の解析を行ったMO株、HAL1166株、RRV株の表面糖鎖の構造解析を行い、ウイルス発現糖鎖プロファイルを比較することで、ウイルス株の識別が可能か評価する予定である。
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YAKUGAKU ZASSHI
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