研究課題/領域番号 |
26860035
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松島 隆英 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, メディカルフェロー (40636560)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グルココルチコイド / 炎症 |
研究実績の概要 |
グルココルチコイド(GCs)製剤は自己免疫疾患を含む様々な難治性炎症性疾患に対する強力な抗炎症作用を有する。しかしながらGCs製剤の長期的利用は糖尿病、高血圧、骨粗しょう症などの誘発や薬剤耐性といった副作用の問題を多く残しており、またGCsの抗炎症メカニズムについてもいまだ謎が多い。本研究においてはGCs-グルココルチコイド受容体(GR)の抗炎症メカニズムを明らかにすること、そして新たな抗炎症薬の創薬ターゲット探索を目的として『GRの転写調節』に着眼し、GRのコファクターを含めた分子ネットワークを明らかにすべく研究を進めている。この目的のために本研究においては大きく分けて、GRの転写調節因子候補の探索、候補因子のGCs-GRの抗炎症メカニズムへの寄与、創薬ターゲットとしての候補因子の評価の3つのステップについて段階的に研究を進めていく。 平成26年度においては本研究に先駆けて実施した遺伝子機能ライブラリーを用いたハイスループットスクリーニングアッセイにおいて同定したGRの転写活性化候補因子27遺伝子について各因子のGCs-GRの抗炎症メカニズムへの関与について組織特異性、細胞内局在、GRとの結合性、炎症刺激下の発現プロファイル、以上の4つのポイントに絞った分子生物学的解析を進めた。27遺伝子の内、特にGRとの結合性が示唆された遺伝子はGRと同様にほぼ全身で発現し、LPSなどの刺激により発現が変化するだけでなく、飢餓などの刺激により細胞内局在が変わるなどの応答性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度においては遺伝子機能ライブラリーを用いたハイスループットスクリーニングアッセイにおいて同定したGRの転写活性化候補因子27遺伝子について、織特異性、細胞内局在、GRとの結合性、炎症刺激下の発現プロファイル、以上の4つのポイントに絞って各因子の分子生物学的解析を行った。各因子の分子生物学的解析については特にGRとの結合性が示唆された遺伝子についてはGRと同様にほぼ全身で発現し、LPSなどの刺激により発現が変化するだけでなく、飢餓などの刺激により細胞内局在が変わるなどの細胞応答性などが認められるなど、一定の成果を得ることができた。 しかしながら当初の計画では免疫細胞を用いたGR転写活性化因子のノックダウン解析を行い各因子のGCs-GRの抗炎症メカニズムへ関与について解析を進める予定であったが、残念ながら各因子の分子生物学的解析に想定以上に難航してしまったために、免疫細胞を用いたGR転写活性化因子のノックダウン解析についてはいまだ解析中である。ノックダウン解析については引き続き平成27年度に実施し、スクリーニングより得られた各因子がGCs-GRの抗炎症メカニズムへ関与について詳細に解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に引き続きスクリーニングより得られた各GR転写活性化候補因子のノックダウン解析を行う。特にGCsによるLPS刺激下におけるマクロファージ細胞の細胞死の抑制、末梢血T細胞のアポトーシスの誘導という2つの表現型が知られている。そこでまず各因子に対するsiRNAをマウスマクロファージ細胞とマウスT細胞に導入し、これら表現型の変化について解析することで各因子のGCs-GRの抗炎症メカニズムへの寄与について評価を行う。27遺伝子以外にも新たにスクリーニングが必要となった場合には、さらに6000遺伝子拡充させたスクリーニングアッセイやsiRNAスクリーニングアッセイをハイスループット解析において遺伝子機能ライブラリーなどのソースを利用して解析を進める。またノックダウン解析などの結果を基に5~6因子を目安にノックアウト細胞およびマウスを作製する。さらにGR転写活性化候補因子とGRの複合体の下流遺伝子を探索するために、ノックアウト細胞などを利用してLPS・Dex刺激下における遺伝子発現解析をDNAマイクロアレイやqPCR法にて解析を行う予定である。
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