研究課題
リソソーム病の一種であるザンドホッフ(SD)病などのGM2 蓄積症は、HexA酵素を構成する遺伝子の変異に基づく遺伝性疾患である。HexA はリソソーム内において、糖脂質(GM2など)を分解する。GM2 蓄積症におけるリソソーム内に糖鎖蓄積が中枢神経症状をもたらす機構の解明を目的として本研究を行った。SD モデルマウス脳total RNA を用いたアレイ解析によって、糖に結合し免疫を活性化する補体活性化レクチンXの発現上昇や補体因子の発現上昇を見出した。レクチンXを免疫染色するとSDマウス小脳のプルキンエ細胞が染色された。Allen Brain Atlas (http://www.brain-map.org/)においてもレクチンX mRNAのプルキンエ細胞における局在を確認した。脳内の免疫細胞であるミクログリア細胞や肝臓組織においてレクチンXのmRNA発現が増加した。脾臓、腎臓、肺では有意に変化しなかった。野生型マウス肝臓のレクチンX産生細胞は脳内のミクログリアと同じF4/80高発現型マクロファージであるクッパ―細胞である。レクチンX及びF4/80のmRNAは脳・肝選択的に発現上昇したが、CD68の発現は脳・肝に加えて腎・肺においても上昇した。以上の結果からSDモデルマウスにおけるF4/80高発現型のマクロファージ内のレクチンX発現亢進が示唆される。ミクログリア細胞は脳内炎症に強く関わる。SDモデルマウス由来ミクログリア細胞に欠損酵素HexA(高安定型改変酵素mod2B、Kitakaze K et al, 2016)を添加すると、レクチンXのmRNA発現亢進が減弱した。以上の結果はレクチンXが酵素活性と連動する有望なSDマーカーとして利用しうることを示している。今後はレクチンXと補体経路を介した免疫活性化について解析を進めたい。
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Gut
巻: 65 ページ: 977-989
10.1136/gutjnl-2015-309372