免疫細胞には、がんを異物として排除する働きだけでなく、がんの悪性化を助長する全く逆の機能があることが確認されている。本研究では、免疫応答によって殺傷されたがん細胞から放出されるプロサイモシンアルファ(PTMA)などのダメージ関連分子パターン(DAMPs)に着目し、それらによる免疫抑制効果、特にDAMPsに対して応答性を示すマクロファージについて、その極性変換を実験的に証明する解析基盤の開発を行った。 がん細胞から放出されたPTMAによるマクロファージの極性変換の証拠を得るために、in vitro細胞共培養系の樹立を試みた。汎用されている二次元培養系は、短時間の細胞間相互作用の結果生じるマクロファージの機能変換については、その解析が可能であり、評価も容易であったが、マクロファージの免疫抑制機能を強く裏付ける結果は得られなかった。そこで、生体内ではより長期間の相互作用が生じるはずであると考え、生体環境により近づけたコラーゲンを支持体とした3次元細胞培養系の樹立を試みた。結核菌感染モデルを応用することで、10日程度の生細胞観察が可能な三次元細胞共培養系を樹立した。この培養系を樹立する過程で、がんが形成する生体微小環境と結核感染時に生じる病巣環境が非常に酷似することが分かってきた。そこで、PTMAなどのDAMPsによるマクロファージ極性化鍵分子の探索方法として、結核感染モデルを採用することにした。実際に結核肉芽腫モデルを病理学的に解析した結果、肉芽腫深部にはDAMPsが豊富に存在し、かつマクロファージの一部が、免疫抑制型であろうM2型に変容していることを突き止めた。
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