研究課題
本研究の目的は脂肪組織由来の間葉系幹細胞(脂肪幹細胞)の数と性質が一生を通じて維持される分子メカニズムを解明することにある。これまでに脂肪幹細胞に高発現している遺伝子を明らかにし、in vitroにおいて脂肪幹細胞の増殖や脂肪分化を抑制する因子としてGタンパク質共役型受容体(Gpr3)と核内受容体(Nr4a1/2/3)を同定した。平成28年度はNr4a1/2/3が脂肪分化を抑制する詳細な分子メカニズムを解析した。雄性のC57BL/6マウスの脂肪組織から脂肪幹細胞を単離し、脂肪細胞への分化過程におけるNr4a1/2/3の発現を免疫染色法により検討した。Nr4a1/2/3 のいずれの分子においても、脂肪幹細胞では細胞質および核の両方に発現していたが、分化の進行に伴って核への局在が観察された。さらに脂肪分化過程にある脂肪前駆細胞では、Nr4a1 およびNr4a3は脂肪分化促進因子であるPPARgammaおよびRXRalphaと複合体を形成することがProximity Ligation Assay法により明らかとなった。Nr4a1およびNr4a3は脂肪分化を抑制することから、PPARgammaおよびRXRalphaと複合体を形成することで作用を発揮している可能性がある。また、Nr4aファミリー分子はジンクフィンガーモチーフを有していることから、脂肪分化抑制作用におけるモチーフの重要性を検討した。ジンクフィンガーモチーフの中でも亜鉛に配位に必要なシステインをアラニンに変異させたNr4a発現ベクターを作製した。変異したNr4a1/2/3を発現させると、PPARgammaの発現抑制作用が野生型よりも減弱しており、Nr4a1/2/3が作用を発揮するためにはジンクフィンガーモチーフが必要であることが示唆された。
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http://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/rinsho/