研究実績の概要 |
本研究は、巨大分泌蛋白質リーリンのプロテオリシス(蛋白質分解)による機能制御機構、及びその生理的意義の解明を目的とする。
脳におけるリーリン分解に対するADAMTS-3の寄与を明らかにするために、ADAMTS-3ノックアウトマウスにおけるリーリンの分解を調べた。その結果、胎生期の大脳皮質では、野生型マウスに比べADAMTS-3ノックアウトマウスでは有意にリーリン分解が減少した。このことから、胎生期においてADAMTS-3はリーリン分解を担う主要なプロテアーゼであることがわかった。さらに、リーリンの下流シグナル分子Dab1(リーリンの活性によりリン酸化を受けダウンレギュレーションされる分子)の量が野生型マウスに比べADAMTS-3ノックアウトマウスでは有意に増加することもわかった。このことは、脳内におけるADAMTS-3によるリーリンの分解は、リーリンの機能を負に制御することが明らかとなった。
リーリンのC末端領域を欠くマウスの解析により、リーリンのC末端領域は遅生まれの神経細胞の配置と樹状突起発達に必要であり、C末端領域内の分解により制御されることを明らかにし、論文として発表した(Kohno et al., J. Neurosci., 2015)。 また、C末端領域内分解により制御されるリーリンシグナル機構を明らかにするために、アルカリフォスファターゼ融合リーリンをprobeとして、完全長のC末端領域に結合する分子が脳スライス上に存在するかを調べた。その結果、大脳皮質の全体や海馬のアンモン角に、完全長のC末端領域に結合する分子が存在することがわかった。
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