研究課題/領域番号 |
26860044
|
研究機関 | 千葉科学大学 |
研究代表者 |
照井 祐介 千葉科学大学, 薬学部, 准教授 (60433687)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ポリアミン / 酸化ストレス / 大腸菌 / 細胞増殖 / 細胞生存率 / eEF1A / SD配列 / グルタチオン |
研究実績の概要 |
ポリアミンは、主にRNAと相互作用し細胞増殖因子として働く。ポリアミンにより翻訳レベルで合成促進をうける蛋白質をコードする遺伝子群をポリアミンモジュロンと命名し、これまでに大腸菌で17種、真核細胞で4種を同定した。本研究ではポリアミンモジュロンとして同定した翻訳伸長因子eEF1Aの蛋白質合成促進機構の解明を行った。 マウス乳がん細胞FM3Aをオルニチン脱炭酸酵素阻害剤であるα-difluoromethyl ornithine有無で培養し、翻訳因子19種の発現量を比較した。eEF1Aの5’-非翻訳領域 (5’-UTR) をEGFPに融合させ、マウス繊維芽細胞NIH3T3に遺伝子導入し、EGFPの発現量を比較することでeEF1Aの合成促進機構を検討した。 翻訳因子19種のうち、ポリアミンにより翻訳レベルで合成促進されたeEF1Aをポリアミンモジュロンとして同定した。次にeEF1A mRNAの5’-UTRの二次構造をZukerの方法で構築したところ、開始コドンから上流26から45塩基のhairpin構造部分に18S rRNAに対する相補配列 (complementary sequence to 18S rRNA: CR配列) が見出された。このCR配列を消失した変異体を作製したところ、ポリアミンによる促進効果が消失した。さらにCR配列を他の18種の翻訳因子mRNA 5’-UTRで探索したところ、上流17から32塩基に存在することを見出した。そこで、eEF1AのCR配列を上流17から32塩基に移動させた変異体を作製したところ、ポリアミンによる促進効果が消失し、ポリアミンの有無に関係なく蛋白質発現量が増加した。従って、真核細胞のmRNAにもSD配列が存在し、SD配列が開始コドンAUGより離れているとポリアミンによる促進が認められることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリアミンの生理機能解明に関し、真核細胞におけるポリアミンにより翻訳レベルで合成促進をうける遺伝子の同定を進めており、翻訳因子eEF1A1を見出した。eEF1A合成のポリアミンによる合成促進メカニズムはeEF1A mRNAの18S rRNAとの相補配列(CR配列)の位置が他のmRNAと異なっているためであることを見出しており、詳細にメカニズムの解明を進めている。さらに、ポリアミンにより翻訳レベルで合成促進をうける遺伝子の同定が大腸菌で順調に進行し、現在酸化ストレスに対するポリアミンモジュロンの同定を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
大腸菌では、ポリアミンが結合して構造変化を起こすことにより、翻訳レベルで合成促進を起こすRNA構造が同定されてきた。この構造変化を分子レベルで更に明らかにするためCDやNMR等により構造解析を行う。また、真核細胞でも同様なメカニズムでポリアミンが翻訳を促進するかどうか、mRNAに特徴があり、細胞増殖・分化に重要な遺伝子をポリアミンモジュロンとして同定する。
|