研究課題
ポリアミンは、核酸、中でもRNAと相互作用し、細胞増殖・生存率維持に重要な特定蛋白質の合成を翻訳レベルで促進する。ポリアミンにより翻訳レベルで合成促進をうける蛋白質をコードする遺伝子群をポリアミンモジュロンと命名し、大腸菌で17種を同定した。本研究では酸化ストレス条件下における新規ポリアミンモジュロンの同定及びその生理機能の解析を行った。大腸菌ポリアミン要求株MA261をポリアミン及び酸化ストレス誘発剤である亜テルル酸カリウム(K2TeO3)の有無で培養し、細胞増殖速度及び生存率を比較した。MA261の細胞増殖速度及び細胞生存率は、0.6 uM K2TeO3存在下において著しく低下したが、ポリアミン添加により、K2TeO3非存在下と同程度まで回復がみられた。そこで、スーパーオキシドジスムターゼの転写因子SoxR、システイン排泄蛋白質の負の転写因子EmrR及びグルタチオン生合成酵素GshAの発現量を調べたところ、酸化ストレス下、ポリアミンにより、翻訳レベルで合成促進をうけることが明らかとなった。また、soxR及びemrR mRNAは、SD配列と開始コドンとの距離が離れており、gshA mRNAは非効率的な開始コドンであるというこれまでのポリアミンモジュロンmRNAと同様に非効率的なmRNAであった。さらに、SoxR、EmrR又はGshAが過剰発現する株において、ポリアミン非存在下で細胞増殖及び生存率に回復が認められた。また、EmrR若しくはGshA過剰発現株において細胞内グルタチオン量が増加した。これらの結果より、ポリアミンはSoxR、EmrR及びGshAを翻訳レベルで合成促進し、酸化ストレス下において細胞増殖及び生存率維持に寄与することが明らかになった。大腸菌におけるポリアミンモジュロンの数は、20種となった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 10(4) ページ: e0124883
10.1371/journal.pone.0124883. eCollection 2015.
ポリアミン
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http://www.cis.ac.jp/~kkashiwagi/index.html