研究課題/領域番号 |
26860046
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
大西 浩之 金城学院大学, 薬学部, 助教 (90523316)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝細胞増殖因子 / M2マクロファージ / IL-4 / IL-10 / STAT3 |
研究実績の概要 |
肝細胞増殖因子(HGF)は傷害に応じて産生が高まる一方、炎症細胞が産生するプロテアーゼによって断片化され、α鎖およびβ鎖(HGF-β)を生じる。これまでの研究から、HGF-βの新規受容体として、マクロファージ(Mφ)に発現しているマンノース受容体(MR)を同定した。今年度は、HGF-β/MR系がMΦからのサイトカイン産生にどう影響するかに着目し、下記の研究結果を得た。 (A) 骨髄由来の培養MΦをM1およびM2-MΦに活性化させたところ、MRはM2-Mφで発現が強く認められた。 (B) HGF-βはM2-Mφを主な標的細胞とする可能性が浮上した。そこで、MΦのサイトカイン産生能に対してHGF-βの作用を検討したところ、 HGF-βはM2-MΦの典型的な誘導因子であるIL-4の共存下でのみIL-10産生を著明に促進させた。この活性はMRノックダウンによって阻害されたため、MR依存的な活性であることが判明した。一方で、HGF-βはIL-1βやIL-6等の炎症性サイトカイン産生には大きな影響を示さなかった。 (C) IL-4はIL-4受容体下流のJAK-STAT系を介してM2-MΦを誘導する。HGF-βはIL-4によるSTAT3活性化を増強する一方で、STAT6の活性化を抑制していた。HGF-βによるSTAT3活性化を阻害剤で抑制したところ、HGF-βのIL-10産生促進活性が阻害された。このことから、IL-4-STAT3経路にHGF-β/MR系が関与している可能性が強く示唆された。 (D) HGF-βがIL-4シグナル経路を修飾することから、M2-Mφサブタイプの変化が予想された。M2マクロファージはM2a、M2b、M2cに細分化されるが、HGF-βはそれぞれのマーカー分子の発現に関しては変化を及ぼさなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究により、MRを介したHGF-βのIL-10産生促進活性が見出された。このことは、HGF-βが抗炎症作用を有するMφを誘導する可能性を示している。さらにその分子機構として、IL-4シグナルの修飾を明らかにできた。次年度、HGF-βの免疫機能をin vitro、in vivoにて検討していくための足がかりをつくることができ、研究はおおむね順調に進められていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、HGF-β/MR系がMφの免疫機能にどのような影響を及ぼすかをin vitro、in vivoの研究で検討する。in vitro解析では、HGF-βがMRを介してIL-4シグナルを修飾する分子機構の解明に取り組む。このほか、制御性T細胞等の特定T細胞の拡大、細胞外マトリックスの分解・産生、血管新生などへのHGF-βの影響についても解析予定である。in vivo解析では、HGF-β刺激で生じたMΦが病態にどのような影響を及ぼすのか、急性肝炎や関節リウマチといった炎症性疾患モデル動物へのadoptive transfer実験を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は当初、研究が順調に進展しており、機器の購入も行ったため研究費の前倒しを行った。その後研究の見直しを行い、物品の一部を購入しなかったため、次年度使用額(約10万円)が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の研究計画に必要な抗体や生化学試薬、培養試薬等の消耗品、また実験動物の購入に研究費の7割を充てる予定である。研究成果の発表あるいは研究の打ち合わせのための旅費等に残額を使用予定である。
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