食習慣の欧米化や不規則な生活リズムなど生活習慣の多様性などに伴い、糖尿病や肥満症に代表されるエネルギー代謝疾患(メタボリックシンドローム)の患者はその予備軍も含め増加の一途を辿っている。最近の研究において、この代謝疾患の疾患メカニズムに炎症応答が密接に関わることが示唆され、その分子メカニズムと治療標的としての有用性に注目が集まっている。本申請課題は、脂肪酸をリガンドとするGタンパク質共役型受容体である、GPR120について免疫応答との関わりからその生理学的機能を解明することを目的としている。 GPR120は、これまでにエネルギー代謝との関連から解析が進んでおり、肥満との関連が報告されていた。また、免疫応答への関与も報告され始めているが、その詳細なメカニズムは不明な点が多い。そこで、炎症惹起や免疫応答に重要な役割を有する免疫応答細胞に着目し検討を行った。これまでにGPR120は、マクロファージに発現していることが報告されていた。遺伝子データベースの発現解析から、GPR120が樹状細胞にも発現していることが確認され、実際にマウス樹状細胞においても遺伝子レベルでのGPR120発現を確認した。また、in vitro実験において樹状細胞における炎症惹起は、脂肪酸刺激によって抑制されることが確認された。GPR120遺伝子改変マウス由来の樹状細胞では、脂肪酸刺激による炎症抑制効果が減弱していることが示された。さらに、炎症性疾患モデルマウスを用いて検討を行ったところ、GPR120欠損により炎症応答とそれにより引き起こされる病態に顕著な差が確認された。これらの検討から、GPR120が樹状細胞において炎症メカニズムに関連し、さらに個体レベルでの炎症応答にも関与している可能性が示唆された。
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