研究課題/領域番号 |
26860058
|
研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
位田 雅俊 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (70512424)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | パーキンソン病 / ミクログリア / ドパミン神経細胞 / ERMタンパク質 |
研究実績の概要 |
ERMタンパク質は、スキャホールドタンパク質でありエズリン (Ezr)、ラディキシン (Rdx)、モエシン (Msn) を含む。中枢神経系において、それぞれのERMタンパク質の生理的や病態生理的機能は不明である。そこで、本研究ではその仮説を検証することで、ERMタンパク質を標的とした新しい創薬基盤の創出を目的としている。 初年度は、ミクログリアにおけるERMタンパク質の機能について以下のことを明らかにした。1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP) 投与マウスを用いた免疫染色の結果、MPTP投与3日後をピークにして黒質に集積した活性化ミクログリアにおいて、リン酸化ERMタンパク質と炎症性サイトカインであるTNFαとが共発現していた。Lipopolysaccharide (LPS) 処置したBV2細胞では、リン酸化ERMが有意に増加した。また、マウスミクログリア細胞株BV2細胞においてEzr、Rdxと比較して、Msnが約2倍多く発現していた。そこで、それぞれのERMタンパク質の発現をsiRNAを用いてノックダウンし、その後にノックダウンしたBV2細胞にLPS処置し、その培養液中のTNFαをELISA法により測定した。対照群と比較してMsnをノックダウンさせたBV2細胞のみ培養液中のTNFαが有意に減少していた。一方で、TNFαの遺伝子発現量は変化しなかった。以上より、ERMタンパクファミリーのうちMsnは、ミクログリアの炎症性サイトカインTNFαの放出機構に関与していることが示唆される。ミクログリアにおけるMsnの制御機構を解明することで神経変性疾患の新たな創薬ターゲットの創出が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果として、以下の中枢神経におけるミクリグリアの病態生理的な機能を見出した点において順調に伸展していると考えている。パーキンソン病モデル動物において、障害された黒質ドパミン神経細胞の近傍に現れる活性化ミクログリアに強くリン酸化ERMタンパク質が共局在していた。そのことは生化学的な解析においても確かめられた。より詳細に検討するためBV2細胞を用いて解析した結果、LPSによる活性化したBV2細胞においてLPS濃度依存的にERMタンパク質の活性化型であるリン酸化ERMタンパク質の増加が認められた。また、LPSで活性化したBV2細胞は炎症性サイトカインを放出することがよく知られている。一方で、ERMタンパク質はその機能は、アクチンフィラメントや細胞膜と相互作用する細胞骨格関連タンパク質である。そこで、炎症性サイトカインの1つであるTNFαに着目したところ、対照群と比較してMsnをノックダウンさせたBV2細胞のみ培養液中のTNFαが有意に減少していた。その際に、TNFαの遺伝子発現量は変化しなかった。従って、MsnはミクログリアのTNFαの放出機構に関与することを明らかにした。今後は、どのような放出機構に関与するのかを明らかにしていく予定である。また、TNFαだけでなく他の炎症性サイトカインの放出にMsnが関与するのかを検証予定である。 一方で、黒質ドパミン神経細胞や線条体神経細胞の初代培養系での伸展が遅く、早急に対応していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
申請書に従って、さらに現状を鑑み、以下のように研究を遂行していく。初年度は、ミクリグリアにおけるERMタンパク質の機能を、MPTPを投与して作製したパーキンソン病モデル動物のin vivo実験系やマウスミクログリア細胞株であるBV2細胞におけるin vitro実験系において解析を行った。本年度はさらに、in vivo実験系とin vitro実験系を活用してMsnのミクログリアにおけるTNFαの放出機構を詳細に解析する。また、申請書にあるように、Msnノックアウトマウスを用いて、活性化したミクログリアとドパミン神経細胞の障害における特に、Msnの役割について詳細に検討する。また、ミクログリアだけではなく、神経細胞、アストロサイトにおいても準備が出来次第に直ぐに解析を始める。すでに、ミクログリアにおける炎症性サイトカインの放出機構において、興味深い知見を得ている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究全体ではほぼ予定通り進んでいるが、神経細胞などの検討準備が若干遅れているために、物品費の次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
申請書の計画に基づき、予算を執行していく。本研究の予算は、in vitro系とin vivo系を含めた分子生物学的解析、生化学的解析、組織化学的解析および薬理学的解析に必要な消耗品代が殆どである。本研究に必要な設備は、本学所属研究室および本学共同利用機器室に現有し、常時稼動しており、直ちに実験を開始できる状況にある。従って、設備備品費は計上していない。また、本研究を遂行するに当たり、得られた研究成果を関連国際学会などで発表するため、国内および海外の旅費を計上した。その他、研究成果発表のための投稿料などの必要最小限の経費を除いて、ほとんどが試薬などの実験消耗品費に当てる。
|