研究実績の概要 |
低用量アスピリンは、脳・心血管イベントに対する二次予防が確認され、世界中で使用される薬剤である。しかし、アスピリンは胃だけでなく、小腸粘膜傷害を引き起こすことが明らかになり、時に重大な消化管出血から生命予後の悪化に至ることがある。その機序解明ならびに予防薬の確立は急務である。申請者は、アスピリン起因性小腸粘膜傷害の初段階とされる上皮細胞の透過性亢進のメカニズムを明らかにし、その過程に関与する上皮細胞間タイトジャンクション構成蛋白質を同定した。本研究は、酸化ストレスにより修飾されたタンパク質を標的としたアスピリン起因性小腸粘膜傷害予防・治療薬の開発を目指すべく立案した。 平成26年度、27年度は、in vitroで低用量アスピリンが小腸上皮細胞内ミトコンドリア障害を引き起こすこと、それに伴いスーパーオキサイドをはじめとする酸化ストレス産生亢進を引き起こすこと、酸化ストレス依存性に小腸上皮細胞透過性亢進を引き起こすこと、その過程にZO-1蛋白質というタイトジャンクション構成裏打ち蛋白質の酸化修飾が関与していることを明らかにした。 平成28年度はこれまでに得られた知見をもとに、実臨床で広く用いられ安全性の確立した抗酸化作用を有する薬剤であるrebamipideを用いて、in vivo,in vitroで、アスピリン起因性小腸粘膜傷害の抑制作用を検討し、rebamipideの小腸粘膜粘膜保護作用を証明した。 研究当初に設定した1)アスピリンにより小腸上皮細胞の透過性がミトコンドリア機能依存性に亢進すること。2)アスピリンにより酸化ストレス依存性にタイトジャンクション構成蛋白質の酸化修飾が起こり、最終的な構造変化が起こること。3)タイトジャンクションの酸化修飾を標的とした薬剤スクリーニングにより、アスピリン起因性小腸粘膜傷害に対する新規予防・治療薬を確立することを3年間で明らかにした。
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