研究課題/領域番号 |
26860067
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
川畑 哲郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (70624873)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ユビキチン活性化酵素(E1) / ユビキチンープロテアソームシステム / 海洋無脊椎動物 / 天然低分子化合物 / 抗がん剤 |
研究実績の概要 |
私たちは、ユビキチン-プロテアソームシステムを標的とすることで、抗がん剤のリード化合物となりうる天然低分子化合物の探索を行っている。本研究課題では、その中でもユビキチン活性化酵素であるE1に着目し、(1)E1を阻害する新たな天然低分子化合物を発見すること (2)現在、最強のE1阻害剤であるHyrtioreticulin Aの阻害機構の解明(3)Hyrtioreticulin Aの類縁体を合成することでより活性が強く、細胞にも効果を示す化合物の発見を目的としている。 平成26年度は、インドネシアにおいて採集した海洋無脊椎動物および海洋由来微生物の抽出物を用いて作製した「薬用海洋資源ライブラリー」を用いて、E1とユビキチンのチオエステル結合形成阻害活性についてウェスタンブロット解析法を用いてスクリーニングを実施し、E1阻害活性を評価した。その結果、いくつかの抽出物に阻害活性が認められた。そして、現在のところ最強のE1阻害物質であるHyrtioreticulin A(IC50 2.4 μM)に関しては、Hyrtioreticulin Aおよび2種の誘導体を合成することに成功した。さらに、類縁体であるHyrtioreticulin B(IC50 35 μM)についても同様に、Hyrtioreticulin Bおよび2種の誘導体を合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「薬用海洋資源ライブラリー」を用いたスクリーニングにおいて、E1阻害活性を評価したところ、活性を示す抽出物を発見することに成功した。そして、活性物質の単離までは至っていないが、活性の認められた抽出物から活性物質の分離を順調に進めている。また、E1阻害物質であるHyrtioreticulin AおよびBの合成および誘導体の合成にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、活性の認められた抽出物から各種クロマトグラフィーを用いてE1阻害剤を単離し、構造解析した後、作用機構まで明らかにするとともに、担がんマウスに対してE1阻害物質を投与することで抗がん作用が認められるか否かについても検討する。合成したHyrrtioreticulin A、B、および各種誘導体のE1阻害活性を評価し、作用機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
生物活性試験において用いる試薬の購入を考えていたが、購入を考えていた試薬を使用しない方法を結果的に用いたため、購入予定の試薬分の金額が次年度使用額として生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
抽出物からの分画の際に用いるシリカゲルやODSの担体、有機溶媒、さらに、NMRを測定する際に用いる重水素化溶媒を購入する予定である。また、次年度使用額として生じた分に関しては、生物活性試験を行うための試薬購入に用いる予定である。
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