研究実績の概要 |
モンゴル国伝統薬用植物を対象に含有成分解析と生物活性の評価を行うことで薬効の根拠を明らかにし、より効果的な活用方法や新たな医薬シーズを見出すことを目的に研究を進めた。特に各成分の生体内作用の評価に昆虫を用いた試験を導入することで、昆虫をモデルとして生体に対する化合物の影響や効き方について考察を得ることを目標とした。 主にヒトと昆虫が共通してもつ自然免疫系への植物成分の影響を評価するためにエンドウヒゲナガアブラムシを用いてフェノール酸化酵素前駆体カスケードによるメラニン化反応に至るまでの現象を利用した試験を実施した。上記アブラムシは自然免疫反応が弱いとされていたが、前処理方法の工夫により評価を可能にし、昆虫自然免疫系に作用するエキス画分や化合物を得た。特にタデ科植物Atraphaxis frutescens より免疫カスケード最終段階のフェノール酸化酵素活性を阻害する化合物を見出し報告に至った (J. Nat. Prod. 2016, 3065-3071)。 次に昆虫の生体メカニズムへの植物成分の作用を調べることに関連して、寄生虫媒介者となる昆虫や感染性疾患に対する効果が伝承されるモンゴル国植物を選び継続発展的に研究を進めた。結果、抗トリパノソーマ活性を示すマメ科Oxytropis lanata由来新規オキサゾールアルカロイドを見出し報告した (J. Nat. Prod. 2016, 2933-2940) ほか、エキスの段階で昆虫に毒性を示したキク科Brachanthemum gobicum から新規アシル化リグナンを、またユキノシタ科Saxifraga spinulosaより抗ピロプラズマ活性を示す新規フラボノイド配糖体を見出したので今後成果を公表していく予定である。当補助金のおかげで当初の計画を達成し、また発展的に有意義な研究を展開できたことに深く感謝したい。
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