研究実績の概要 |
今回、Malbranchea filamentosa の産生するトリテルペンを誘導する米培地含有成分の探索を行うため、すでに誘導活性が確認されているクロロホルム画分の分画を行った。まず、LH-20 を担体としたカラムクロマトグラフィーに負荷し、10 画分を得た。この時、Hexane-CHCl3 4:1、CHCl3-Acetone 4:1、2:3、Acetone、MeOH を移動相として用いた。得られた各分を M. filamentosa に添加培養し、トリテルペン産生誘導活性を確認した所、5、6 及び 7 画分に活性が確認されたため、次にこれらの画分の精製を試みたが、含有量が少なく、構造決定に至らなかった。そのため、低分子化合物を多く含むと思われる市販の米油を購入し、誘導活性を確認した所、活性が確認されたため、これを用い、精製を行った。米培地の場合と同様に精製後、順相の HPLC を用い、誘導活性物質の単離、精製を試みたところ、活性画分に共通した物質が観測された。本物質の 1H-NMR スペクトルを測定した所、d3.60 (dd, J=5.9, 11.7 Hz)、d3.70 (dd, J=3.4, 11.7 Hz)、d3.93 m、d4.25 (dd, J=6.2, 11.7 Hz)、d4.21 (dd, J=4.8, 11.7 Hz) というグリセロール残基に特徴的なピークが観測された。また、高磁場領域に脂肪酸由来と考えられるピークが観測されたことから、本物質はアシルグリセロール構造を持つと決定された。脂肪酸領域のピークのカップリングパターンから本物質は単一ではなく、脂肪酸部分が異なる二種以上のアシルグリセロールの混合物であることが示唆された。
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