最終年度は、研究実施計画として、①候補化合物の探索、②候補化合物の作用機構の解析を計画していた。 ①候補化合物の探索;前年度は、生薬成分のシコニンにおいて、マクロファージの強力な活性化剤である、リポポリサッカライド(LPS)処理マクロファージに対して、細胞障害を誘導することを明らかとした。それに引き続き、本年度は、シコニン誘導体である、アセチルシコニンなども同様の作用を有していることを明らかにした。さらに、クルクミンにもシコニンと同様の作用を有していることを明らかにした。 ②候補化合物の作用機構の解析;シコニン誘導体の解析については、シコニンを中心に解析を行った。その結果、シコニンによる活性化マクロファージ特異的に誘導する細胞障害は、アポトーシスを介している事が分かった。また、本細胞障害は、マウスより単離した腹腔マクロファージにおいても誘導されることから、生体内でも同様の現象が起こることが予想された。さらに、細胞種における特異性を調べる目的として、線維芽細胞を用いた検討を行った。その結果、LPS共存下において、細胞障害は誘導されず、本事象は、マクロファージに特異的な現象であることが示唆された。クルクミンについては、LPS処理マクロファージにおいて、シコニン同様に細胞障害を誘導する事が明らかとなった。しかし、細胞障害機構は、アポトーシスの関与は部分的であり、その他の細胞死機構が関与している可能性が強く、シコニンとは別の標的因子を介している可能性が示された。 本研究を通じて、マクロファージに特異的に作用する、新たな候補化合物の同定に成功しており、マクロファージを標的とした新規抗炎症薬の開発や標的因子の同定に近づいていることから、非常に意義深い成果が得られていると考える。
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