研究実績の概要 |
オピオイドkappa受容体選択的アゴニストに必要な側鎖の配向とその長さを探るため、ビシクロ[2.2.2]オクタン構造を有するモルヒナン誘導体の合成を試みた。しかし、この骨格を有する誘導体はほとんど報告されていないため、はじめにその骨格の構築について検討を行った。まず、ナルトレキソン塩酸塩から7段階を経て、モルヒナン骨格を有するメチルエノールエーテル体を合成した。4,5-エポキシモルヒナン骨格を有する場合には6,7-オレフィンが選択的に生成するが、4,5-エーテル結合を除去したモルヒナン骨格の場合では5,6-オレフィンと6,7-オレフィンが約1:9の比で得られた。次に、6,7-オレフィン体からジエンを合成するため、ピリジン中で塩化チオニルを作用させて14位ヒドロキシ基の脱水を試みたところ、この条件では脱水反応が進行せず、14位と7位がスルフィン酸エステルで架橋された新規骨格を有するエノールエーテル体が生成した。したがって、モルヒナン骨格を有するエノールエーテル体からジエン体を合成するためには、窒素の非共有電子対の押し出しによる転位反応を抑制しつつ、14位ヒドロキシ基を脱水する条件を検討する必要があることが明らかになった。 また、ビシクロ[2.2.2]オクタン構造を有する新規4,5-エポキシモルヒナン誘導体の合成を目指し、ジエン体とビニルスルホンアミドとのDiels-Alder反応について検討を行った。その結果、この反応はトルエンを溶媒として用い、封管中で140度に加熱した場合には全く進行しないものの、180度まで加熱すると環化付加体が得られることを明らかにした。さらにプロペラン型五環性骨格を有する誘導体の合成についても行った。
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