研究実績の概要 |
オピオイドκ受容体選択的アゴニストに必要な側鎖の配向とその長さを探るため、ビシクロ[2.2.2]オクテン骨格を有するアミド誘導体の合成を行った。ビシクロ[2.2.2]オクテン骨格を有する2,4,6-トリクロロフェニルエステル誘導体にDMAP及びトリエチルアミンの存在下、種々のアミンを加えて加熱することでアミド誘導体を合成できるが、アミンとしてアニリンを用いた場合には反応が進行しなかった。そこで、エステルを水酸化ナトリウム水溶液で加水分解した後、HATUを用いてアニリンを縮合した。 側鎖がα側、β側およびF環平面上にそれぞれ伸長したN-フェニル、N-ベンジル、N-フェネチルアミド誘導体のオピオイド受容体結合試験の結果を比較すると、側鎖がF環平面上に伸長した場合に最もκ受容体に親和性が高かった。また、側鎖の脂肪鎖部分の長さが親和性に与える影響は伸長方向によって差がみられ、F環平面上の側鎖は脂肪鎖部分が長くなるほどκ受容体に親和性が高くなるのに対し、α側およびβ側の側鎖ではN-フェネチルアミドが最もκ受容体親和性が高く、次いでN-フェニル、N-ベンジルアミドの順であった。また、F環平面上に側鎖を伸長した誘導体において受容体タイプ選択性を比較するとN-ベンジルアミド誘導体がN-フェニルおよびN-フェネチルアミド誘導体よりも高いκ受容体選択性を示した。次に、側鎖がF環平面上に伸長したN-メチル-N-ベンジルアミド誘導体について[35S]GTPγS結合試験で作動活性を評価したところ、作動活性およびμ/κ比がナルフラフィンよりも優れていた。また、マウスの行動薬理学試験でこの化合物を評価する機会が得られ、予備的な実験結果ではあるが、ナルフラフィンと同等の鎮痛作用を示すこと、鎮痛用量で鎮静作用および薬物嫌悪性を示さないことが確認された。
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